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フェラーリ初の4シーターのV12スーパースポーツとして注目を集めるプロサングエ。しかし、プロサングエはあくまでもスポーツカーであるという。フェラーリのDNAを宿し、ドロミーティのワインディングロードを駆け抜ける。
「芸術こそ至上である。それは生きることを可能ならしめる偉大なもの。生への偉大な誘惑者、生への大きな刺激である」19世紀のドイツ人哲学者、フリードリヒ・ニーチェは著書『権力への意志』でそう述べた。彼の言葉から読みとれるのは、人が生きていくためには、生への偉大な誘惑者たる、大きな刺激が必要である、ということだろう。確かに芸術や音楽、そしてスポーツなど、我々は生命の営みには必ずしも必要のない“何か”を求め、それが与えてくれる刺激により、日々の生活に彩りを添え、新たなる時代を築く創造力を得てきた。ニーチェはかつて芸術を至上としたが、テクノロジーが発達した21世紀においては、刺激の源はさまざまだ。とりわけ、クルマのように私たちに身体の限界を超えた能力を与えてくれるツールは、新次元の刺激をもたらしたといえる。その最たる例が、フェラーリだろう。見る者を魅了するスタイリングやドライバーを高揚させる走りなど、A地点からB地点へと移動するための道具という範疇を遙かに超えて、芸術のごとく人々を刺激して止まない存在だからだ。それは、フェラーリ初の4ドア・フル4シーターモデルとして登場したプロサングエも例外ではない。イタリア北東部、ドロミーティで開催された国際試乗会で同車のステアリングを握り、そう確信した。
フェラーリ初の4シーターのV12スーパースポーツとして注目を集めるプロサングエだが、実はフェラーリではSUVとは謳っていない。
「プロサングエはあくまでもスポーツカーなのです。なぜなら、これまでのモデルと変わらないフェラーリのDNAを持っているからです」
これはフェラーリジャパン社長 フェデリコ・パストレッリ氏の言葉だ。氏によるとイタリア語で純血種(=サラブレッド)を意味するプロサングエという車名自体が、フェラーリのDNAを受け継いでいる証しだという。
ではフェラーリのDNAとは何か? まず挙げられるのがスタイリングだ。ボディサイズは全長4,973mm、全幅2,028mmと、既存のフェラーリのどのモデルよりも大きい。1,589mmの全高は、いわゆるSUVタイプとしては低いが、それでもフェラーリ初の4シーター4WDとして人気を博したGTC4ルッソより200mmも高い。にもかかわらず、プロサングエのデザインは一見して“跳ね馬”の一員であると感じさせる。ロングノーズとコンパクトなキャビンが生み出す完璧なプロポーションや、アスリートの筋肉のようにしなやかに張り出したフェンダー回りなど、フェラーリのデザイン文法を忠実に踏襲しているからだ。
「私たちはこのモデルをベルリネッタ(スポーツクーペ)のように仕立てようと考えました。彫刻のように造型された、流線型のダイナミックなベルリネッタです」
これはフェラーリのスタイリングセンターを率いるフラビオ・マンゾーニ氏がプロサングエについて述べたものだが、氏の言葉通り、稀代の彫刻家が天然石から削り出したかのような芸術的な造型といえるだろう。
フェラーリが「ウェルカムドア」と呼ぶ、いわゆる観音開きタイプのドアを前後ともに開けると、スポーティネスとエレガンスが見事に融合したフェラーリならではのインテリアが広がる。
左右が独立したスポーツタイプのリアシートは、フェラーリがフル4シーターと謳うだけあり、大人2人がリラックスして移動できる広々とした空間が確保されている。乗り心地はフラットで上質。また、タウンスピードでは長いフロントノーズに収まるV12エンジンの存在を感じさせないほど静粛性が高く、高級サルーンと遜色のない快適性を実現している。
一方、ドライバーズシートは低くタイトな印象だ。車高が高い分、ドライバーの着座位置も高いが、フロアとシート座面の位置関係などが他のフェラーリと等しいからだろう、おなじみのドライビングポジションがとれるのだ。この辺りにも、「プロサングエはあくまでスポーツカー」というフェラーリの主張が感じられる。
フェラーリのDNAの象徴ともいえるのが、伝統のV型12気筒エンジンだ。プロサングエに与えられた新開発の6,496cc V12ユニットは、最高出力725cv/7,750rpm、最大トルク716Nm/6,250rpmというアウトプットを誇りながら、2,100rpmで最大トルクの80%を発揮するフレキシビリティも備えている。プロサングエは、このV12エンジンをフロント車軸より後方、いわゆるミッドフロントに搭載し、新開発の8速デュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)をリアに配置する、従来のフェラーリと同様のレイアウトを採用。さらに、非常にコンパクトなパワー・トランスファー・ユニット(PTU)をエンジンの前方に組み合わせ前輪を駆動する、ユニークな4WDシステムを搭載。それらによりフロント49%、リア51%という、フロントエンジンのハイパフォーマンスカーとして理想的な前後重量配分を実現している。
こうした素性の良さが、研ぎ澄まされたパフォーマンスに結実しているのだろう。右へ左へとタイトコーナーが続くドロミーティのワインディングロードで、プロサングエはそのボディサイズをまったく意識させない、スポーツカーそのものの走りを披露してくれたからだ。
俊敏な走りには、油圧式ダンパーに48V電源で駆動するモーターを組み合わせ減衰力をコントロールする、世界初のフェラーリ・アクティブ・サスペンション・システムや、左右後輪の切れ角を独立して制御する4輪操舵システムも寄与している。
特筆すべきは、そうした最新の電子制御デバイスが完全に黒子に徹し、主役たるドライバーにその存在を意識させないことだ。あくまで主役はドライバーであり、「クルマに乗せられている」という感覚を抱かせない。跳ね馬のエンブレムを冠したクルマは、4ドア・フル4シーターといえども最高のドライバーズカーなのだ。
たとえば、クルマをA地点からB地点へ移動するための道具だとすれば、もちろんプロサングエは完璧なツールである。なぜなら、いかなる路面状況においても、前述した4WDシステムやアクティブ・サスペンション・システムをはじめとする先進テクノロジーにより、大人4人が快適に移動できるからだ。それこそ、従来のフェラーリには求められない資質である。
しかし、快適な移動を叶えるツールという範疇に収まらない魅力が、プロサングエには溢れている。イメージしたラインを寸分違わずトレースするハンドリング、V12ユニットが右足の動きに直結しているかのようなリニアな加速フィールや官能的なサウンド……。プロサングエには、ドライビングというクルマとのコミュニケーションに一切の雑じり気がない。それゆえに、得られる刺激も非凡なものとなる。このことこそが、プロサングエをして“跳ね馬”の一員たらしめているもっとも大きな要因だといえるだろう。
まさにプロサングエは、かつてニーチェが芸術に求めたものと同様の刺激を湛えた、“生への偉大な誘惑者”なのだった。
主要諸元 | フェラーリ プロサングエ |
全長×全幅×全高 | 4,973×2,028×1,589mm |
車両重量 | 2,033kg |
駆動方式 | 4WD |
トランスミッション | 8速DCT |
エンジン | V型12気筒、6,496cc |
最高出力 | 725PS/7,750rpm |
最大トルク | 716Nm/6,250rpm |
車両価格 | ¥47,600,000~(税込) |
STAFF
Photo: Ferrari Japan
Writer: Koichi Yamaguchi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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