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週刊プレイボーイを100万部雑誌に育て上げた伝説的編集長、島地 勝彦。その後『MEN’S Precious』の連載『お洒落極道』をはじめ、数々の執筆活動を通じて、円熟世代のダンディズムを牽引してきた。現在は、エッセイスト/バーマンとして、東京・西麻布で『Bar Salon de Shimaji』を営み、旺盛な執筆活動も継続。AdvancedTime onlineでは、究極のお洒落を求めて、時計に特化した〝お洒落極道〟online版を連載中。話題の腕時計について、古今東西のエピソードを披露しながら、縦横無尽にその魅力に迫っている。
わたしは若い頃から随分とシガーやワイン、ウイスキーを嗜んできた。今の時代はインフレだとかいって、お金をモノに代えて資産を減らさないようにするのが流行っているようだが、シガーのように煙となって消えるもの、お酒のように飲んだら無くなってしまうもののほうが崇高だと思っている。30歳手前の頃、今東光大僧正の担当をしていたとき、初めてロマネコンティのお相伴にあずかる機会があって、その馥郁たる香りと重厚な味わいに全身に電流が走った。この記憶は今なお残っていて、残っているということは無形資産なんじゃないかとさえ思っている。
そんなわたしが心を許す数少ないモノは腕時計である。集英社を退職したときにドゥ グリソゴノを購入して以降、数々の時計を手に入れてきた。実は若い頃はまったく興味がなかった。所詮、実用品である以上、時代の進化に応じた身体拡張性を持つ道具でしかないと思っていたのである。しかし今、81歳にしてバーカウンターの前に立っていると、腕時計から生まれる機微があるのに気が付いた。常連のビジネスマンがクライアントを伴ってバーにきたとき、いつもと違う上品な時計を着けていると大きな商談が決まりそうだとか、久しぶりにやってきたお客様が新しい時計を着けているのを見ると、少し高い酒を薦めてみようとなるわけである。
そこで、話題の新作時計くらいは知らなければなるまいと思って、AdvancedTime onlineで「お洒落極道」の時計連載を始めたのである。まず対峙したのは、50年前に誕生したオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」だった。わたしは50年前に、総理大臣になる前の田中角栄に早朝インタビューをしたのだが、その後の朝7時に鰻重が出てきた。真空パックの鰻などない時代、24時間いつでも出前してもらえるように鰻屋をたらしこんでいたのだ。オーデマ ピゲにも同じ「人たらし」がいた。CEOだったジョルジュ・ゴレイ(当時)はウォッチデザイナーのジェラルド・ジェンタに、新しい時計のデザイン案を翌朝までに出してくれと、前日の夕方に依頼する。現在なら労基法違反に問われるところだが、ジェンタはやり遂げた。この関係性は角さんと鰻屋との関係性に通じる。
またオメガの「シーマスター プラネットオーシャン ウルトラディープ」にも驚いた。なんと6000mの防水性能を誇るという。この時計ならば、深海に沈む、わたしの大好きなタイタニック号を訪問することも可能なのでは、と興奮した。映画にもなった、1912年にニューファンドランド島の沖合で沈没した、あの豪華客船のことだ。現在では3600mの海底に沈んでおり、有人・無人の潜水艇が訪れている。しかし、深海の海流と塩水、および特に金属を食べるバクテリアで船体の腐食が進んでいるという。バクテリアはタイタニック号にちなんで「ハロモナス・ティタニカエ」と名付けられた。このウルトラディープはオメガ独自の合金をケース素材に採用しており、通常よりも耐食性に優れている。タイタニック号の船体が、鉄喰いバクテリアにも負けないこの特殊合金でできていればと思ったものだ。
こんな風に、カウンター越しにお客様の腕時計を見ては、エピソードや空想を披露している。もちろん、教えてもらうことも多い。昌頭にシガーや酒のように消えて無くなるものが好きだと言ったが、すべてが消えるわけではない。灰やボトルは必ず残るものだ。腕時計というものは、過ぎ行く時間が残していったものだと考えれば、モノ自体を、崇高なものとして受け入れることができるのだ。
¥3,025,000/オーデマ ピゲ
ラグジュアリースポーツウォッチの金字塔として50周年を迎えるロイヤル オーク。そのアニバーサリーモデルには、八角ベゼルのスタイルはそのままに、1972年当時のクラウド50と呼ばれるナイトブルーのダイヤルカラーを採用し、再現性を高めた。ブランドロゴはプリントからゴールドのアプライドに変更。自動巻きローターは50周年ロゴを象った特別仕様。自動巻き。ステンレススティールケース。ケース径37mm。
¥1,584,000/オメガ
ケースの直径が45.5㎜で厚みが18.12㎜の大型サイズに、分厚いサファイアクリスタルガラスを採用し、6000mの防水性と水圧に耐えうる頑強さを備える。潜水時のヘリウムの膨張にも耐えられる新設計で、エスケープバルブは不要。ムーブメントには高精度、高耐磁性能を保証するマスタークロノメーター認定のCal.8912を搭載する。6000m防水。自動巻き。O-MEGAスティールケース&ブレスレット。ケース径45.5㎜。
大学卒業後、集英社に入社。「週刊プレイボーイ」編集部に配属され、1982年には同誌の編集長に就任し、100万部の雑誌へと育て上げた。その後「PLAYBOY」「Bart」の編集長を務める。柴田錬三郎、今東光、開高健、瀬戸内寂聴、塩野七生をはじめとした錚々たる作家たちと仕事を重ねてきた。「お洒落極道」「お洒落極道 最終編」(小学館)など著書多数。現在は西麻布にあるサロン・ド・シマジにて、バーカウンターの前に立つ。
初出:2022年9月24日発行『AdvancedTime』13号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
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