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「デザイナーとして装飾家というより、建築家」と話す、ルカ・オッセンドライバー氏が手掛ける「Theory Project」のシティ・ワードローブ。究極のシンプルと精緻なファシリティが両立し、気負わない日常ファッションがグッとおしゃれに。
『Theory』の美しいシンプルを極めた日常着の哲学に、新たな洗練カジュアルの解釈が加わった「Theory Project」が始動。世界で活躍するファッションデザイナー、ルカ・オッセンドライバーが初めて手掛けるシティワードローブは、気負わずとも特別な高揚感を与えてくれるデザインの数々。日々のファッションに喜びをもたらす、静かで熱いエネルギーが宿っています。
――『Theory』といえば、黒や白、グレーなどベーシックカラー…といったイメージがあります。ルカらしさを打ち出すにあたり、配色についてどう考えましたか?
ルカ・オッセンドライバー氏(以下:ルカ氏) : 色は私にとって非常に重要で、身につけるとたちまち気分が高揚します。だから、『Theory』にもっと色をプラスしたいと思っていました。私は、独特なカラーパレットを持っていて、少し落ち着いた色、明るすぎない色、時にはグレーに近い色などを好みます。生地によって微妙に色のトーンが違うので、最終的にミックスしたときに、均一になりすぎず、よりリッチに見えるようにしています。
――『ランバン』では、美しいラインを作るための「神がかったディテール」が数多くありました。『Theory』の「無駄をそぎ落としたシンプルな服作り」の中で、ルカの真骨頂とも言えるディテールテクニックは、どのように活かされてくるのでしょうか。
ルカ氏: ラグジュアリーメゾンでの経験を生かし、商品をより良いものにしたいと考えました。使用する生地は良質なもの(主にイタリアと日本の工場から)で、サステナブルなものも多く、一部のナイロンはリサイクル、ウールはトレーサブルで、生産も素晴らしいものです。
私にとってのミニマルとは、要点が明確であることです。洋服にはたくさんのディテールがあり、すべてのアイテムがスペシャルで、考えられています。カット、仕上げ、生地、色、どれをとっても、です。ただ、そのディテールは服の構造とリンクしていることが多く、遠目には見えないこともあります。
――日本で、『Theory』は20年以上にわたり、働く女性のユニフォームと言われるほど、誰もがワーキングワードローブに必ず2、3着以上持っている信頼のブランドです。今回のコレクションは「都会的なカジュアルスタイルコーデから着想を得ている」とのことですが、特別なシーンをいくつか想定しましたか?
ルカ氏: 『Theory』は以前から好きなブランドで、そのデザイン哲学に親しみを感じていました。目的にかなった服、機能的でデザイン性の高い服、価格面でも。「ファッション」と叫ぶような華美な服ではく、人々の生活の中で機能し、気持ちよく過ごせるような服。街で着られる本物の服。だからコレクションについて考え始めたとき、機能性は最も重要な要素のひとつでした。ランウェイで主張するのではなく、デザイン性の高い都会的な洋服。私が提案するアイテムは、人々が自分でミックスしたり合わせたりして、自分だけのスタイルを作り上げることができます。着こなしを指示するのではなく、提案するのです。
カジュアルとフォーマルの融合は、常に私のデザインの重要な要素の一部であり、それこそが私の得意とするところです。どこかに出かけるときは、きちんとした印象を与えたいけれど、フォーマルすぎるのはちょっと……。私はいつも、100%明確ではないもの、たとえば、フォーマルとカジュアルの間に存在するものからインスピレーションを受けてきました。今の時代、洋服はライフスタイルに合わせた機能的なものでなければなりません。
――メンズとウイメンズと、同じアイテムの中で、ちょっとしたデザイン、ディテールの違いが見られました。そのアプローチの差違は、どのような視点からきているのでしょうか?
ルカ氏: 今回のコレクションは、私にとって初めての本格的な ウイメンズウェアのコレクションです。そのプロセスは実に流動的で、私は自分の仕事のやり方を変えずに、かなり実践的に取り組みました。私はいつも、衣服の構造や作り方、そしてそれを改良していくことにとても興味を持っています。ファッションに興味を持ったのも、実はそれがきっかけでした。
メンズウェアも ウイメンズウェアも、いろいろと試着してみました。また、『Theory』はメンズとウイメンズの精神(コンセプト)がそれほど変わらないブランドで、両者の間に強いつながりがあるという考え方も好きです。もちろんプロポーションは若干違いますが、ほぼユニセックスなアイテムもあります。特に目につくのはアウターウェアです。パーカーやボマージャケットは、生地も構造もほぼ同じです。 ウイメンズウェアのデザインは、メンズのデザインより、より多くの可能性があり、できることも豊富で、いろいろなことが実験できました。初めてドレスをデザインしたときはとても楽しかったですね。
――特別な日だけでなく、何気ない日常でも、洋服を着る高揚感を与えてくれています。ファッションの喜びをもたらす理由はどこにあると思いますか?
ルカ氏: 服は着る人に自信を与え、自分自身を良く見せてくれて、快適な生活を送れるようにしないといけません。気分がいいと、見た目もよくなりますからね。
――上質な素材感や、芸術的なシルエット、驚異的なカッティングなど、ルカのつくる服のクオリティの高さを、ユーザー(および潜在的なファン)に、どのように伝えていきますか?
ルカ氏:ある意味、私はデザイナーとして装飾家よりも建築家なんです。近くで見て、触ってみないとわからない。どちらかというと、見る人よりも、着ている本人がディテールを楽しむもので、より親しみやすいと思います。『Theory』とのコラボレーションで素晴らしいのは、会社の規模が大きいので、自分がやったことのインパクトがリアルに伝わることです。『Theory』はニッチなブランドではなく、お客様の層が広いのです。私たちの商品はランウェイのために作られたコレクションではなく、多くの店舗で実際に販売されるものなのです。
ルカ氏:今までも、そして今回の『Theory』でも、私の仕事のやり方は変わりません。いわゆるファッションスケッチを起こさないのです。モデルに生地をまとってもらい目視して確認して作っていきます。服はデザインするというより、〝作る〟ことが好きなんです。
――日本のファンにメッセージを。
ルカ氏: このプロジェクトでようやく久しぶりに日本に来ることができ、とても興奮しています。私は日本が大好きです。ファッションに対する純粋な興味と、服で自分を表現する人々の姿がとても魅力的です。とても刺激的です。
パリとニューヨークを行き来していますが、ニューヨーカーは常に行動していてエナジーが高い印象です。東京も近い、いやもっとかもしれないですね。昼間は仕事をして、そのまま夜は着替えることなくディナーへ行く。ですから、シティファッションには柔軟性と汎用性が必要になります。フォーマルとカジュアルを備えたハイブリッドなファッションを提案します。毎日がファッションで楽しくなるとステキですね。
【ルカ・オッセンドライバーのTheory Projectはこちらからチェック】
ルカ・オッセンドライバー。1971年オランダ生まれ。パリを拠点に活動するファッションデザイナー。’95年アーネムアカデミー、マスタークラス・ムラージュ修了。’01年DIOR HOMME (ディオール オム)のデザイナーとしてエディ・スリマンのもとで働く。’05年LANVIN(ランバン)のメンズウエアデザイナーに就任。’22年Theoryのデビューカプセルコレクションを発表。
STAFF
Editor:Kyoko Seko
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