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ドイツ製品は精密かつ頑強で実用的というパブリックイメージが強い。まさしく質実剛健という言葉に集約される。そして、その言葉に最もふさわしいブランドが、A.ランゲ&ゾーネだ。 歴史に翻弄されながら、愚直なまでにドイツ品質を維持し続けるその実力に迫る。
一度はブランドの歴史が途絶えながら、見事に復興を果たしたA.ランゲ&ゾーネ。現在ではドイツ国内の高級ブランドランキングで長年1位に君臨する高級時計ブランドだ。しかし、そこにたどり着くまでには困難な試練を乗り越えなければならなかった。
A.ランゲ&ゾーネというブランド名は「アドルフ・ランゲと息子たち」を意味する。フェルディナンド・アドルフ・ランゲが1845年にドイツ・グラスヒュッテで時計工房を創業し、その後、長男リヒャルト、次男エミールが加わったことが由来。アドルフは修業時代にはドレスデンのゼンパー歌劇場に五分時計を設置した名うての時計師として知られ、息子たちが加わる頃にはグラスヒュッテを時計産業の一大拠点に成長させた実業家でもあった。しかし、第二次世界大戦で本社を焼失、終戦後は東ドイツ政府に資産を接収され、ブランドは消滅を余儀なくされる。
転機が訪れたのは1989年11月、ベルリンの壁崩壊。その時、西ドイツで雌伏の時を過ごしていたアドルフの曽孫ウォルター・ランゲと、IWCのCEOであったギュンター・ブリュームラインが立ち上がり、東西ドイツが統一されるとすぐにA.ランゲ&ゾーネの再登記と商標登録を行った。そして1994年には復興コレクション第1弾として4モデルをリリースしたのである。
その中でブランド復興の象徴となったのが「ランゲ1」だ。非対称で黄金比に基づく均整の取れた文字盤デザイン、テンプ受けのハンドエングレービングの装飾、ムーブメントの堅牢性を保つ4分の3プレート、一度組み立てたムーブメントを分解して再度組み立てる二度組みなど、ウォルターの情熱が注がれた時計は世界中から称賛を浴びた。そして伝統を継承しながら、現在はその殻を打ち破る新機軸のステンレススティール製モデルを発表するなど着実かつ独自に歩みを進める。歴史の試練は長く苦しかったはずだ。しかしその空白期間にA.ランゲ&ゾーネの時計作りには、揺るぎのない哲学が醸成された。だからこそ、その時計は完璧で、迫力に満ちているのだ。
オフセンターに配置された2つのインダイヤルに、パワーリザーブ表示とアウトサイズデイトを備えるデザインは、機能が独立していて視認性も高い。シースルーバックからは手作業で丹念に仕上げられたムーブメントが見られる。
1815とはアドルフ・ランゲの生誕年にちなんでおり、アラビア数字やレイルウェイでクラシックにまとめた。8時位置には特許を取得したパワーリザーブ表示のAUF/ABを配置。72時間パワーリザーブ。
ケースの厚みは5.9㎜とブランドの中で最も薄い。バーインデックスと2針のみのシンプルなデザインで、究極のドレスウォッチに仕上げた。パワーリザーブは72時間も備え、実用性が高い。
科学者で発明家でもあった2代目リヒャルトの名を冠する。科学観測用のデッキウォッチがモチーフで、長い秒針や自社製ヒゲゼンマイが高精度を象徴する。
創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲがドイツ・ドレスデンに誕生。
アドルフが宮廷付き時計職人となるヨハン・フリードリッヒ・グートケスの元に徒弟奉公に出る。
徒弟奉公を終えてパリへ赴き、クロノメーター製造技術を持つ時計師の工房を訪ね歩く。
ドレスデンに戻り、グートケスと共同でドレスデンのゼンパー歌劇場のために「五分時計」を製作。
グラスヒュッテに移住し、“A.Lange&Cie”という名で創業。
ムーブメントの安全性を高めるために、4分の3プレートを開発。
息子のリヒャルト・ランゲや3年後に加わる弟エミールも経営に参画し、社名を「A.Lange&Söhne(ランゲと息子たち)」に変更。
動力伝達機構にチェーンフュジーを使ったクロノメーター懐中時計を発表。
ドイツ帝国皇帝ヴィルヘルム2世がコンスタンチノープルを公式訪問した際にA.ランゲ&ゾーネの懐中時計を贈呈。
アドルフ・ランゲの曽孫にあたるウォルター・ランゲが誕生。
終戦前日のソ連軍の空襲でランゲの本社工場が焼失。
東ドイツ政府により会社が接収され、グラスヒュッテ国営時計会社に統合される。ウォルターは西ドイツへ脱出。
東西ドイツ統一後、ウォルターはグラスヒュッテに戻る。12月7日には会社を設立して、A.ランゲ&ゾーネを再び商標として登録。
ドレスデンの王宮で復活コレクションとして4モデルを発表。
新生ランゲ初の自動巻きムーブメントを搭載したランゲマティックを発表。
最高精度の機械式クロノグラフと称されるダトグラフを発表。
昔の本社工場を買い戻し、再び時計が製造されるようになる。復興後初の永久カレンダーモデルを発表。
「F・A・ランゲに捧げる165年」と題した記念モデルを発表。
地熱発電機を備えた新工場が完成。
初のステンレス製のレギュラーモデル「オデュッセウス」を発表。
創業175年を記念したアニバーサリーモデルを発表。
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初出:2023年7月1日発行『AdvancedTime』17号。掲載内容は原則的に初出時のものです。
STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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