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時計という規格化された工業製品に、自由な発想で個性を発揮する文字盤&ケースに注目。既成概念にとらわれない造形や色彩、素材使いなど強烈な印象を与える大胆なデザインを持つ6本をご紹介。
腕時計に求めるものは、人によって違う。時刻を知るための実用性、正確さ、機能性、資産価値、ステータス。そして身につけた瞬間に気分を変えてくれるデザインもそのひとつだ。
なかでも最初に目に飛び込んでくるのが文字盤やケースフォルムのデザインであることは間違いない。時計の顔というべき場所だからこそ、そこにどんな表現を選ぶかで、その時計の印象が大きく変わる。
誰もが見慣れた針と数字、端正に整えられた文字盤には確かな安心感がある。それは時計の王道であり、何年使っても飽きにくい美しさでもある。しかし2本、3本と時計が増えていくと、話は少し変わってくる。いつも優等生である必要はない。たまにはルールから少し外れてみたくなる。色で遊び、数字を崩し、素材を変え、文字盤を小さなキャンパスにしてしまう。ケースそのものを大胆に造形した時計も面白い。こうした時計は時刻を読むという本来の役割を越えて、身につける人の気分や個性まで表現してくれる。正統派の美しさを知っているからこそ楽しめる、腕時計のもうひとつの魅力だ。
今回はそんな遊び心を持った6本を選んだ。まずは溶けたようなケースフォルムを持つカルティエの「クラッシュ」からだ。
1967年にロンドンで誕生した「クラッシュ」ウォッチが、「カルティエ プリヴェ」10作目を飾るモデルとして、スケルトン仕様となって再登場。ケースはまるで熱で溶けたように歪み、スケルトンになった文字盤のローマ数字もケース形状に呼応するかのように引き伸ばされている。デザインの規律を重んじてきたカルティエが、あえてそれを崩した不均衡さが特徴だ。搭載されるのは、手巻きの自社製Cal.1967 MCで、ローマ数字そのものがムーブメントのブリッジとして機能し、ケース形状、文字盤デザイン、機械構造を完全に統合させている。時分針やリューズの位置も変更されているが、その不均衡さがまた個性となっている。この独特な形状を実現するために、自社で製造するドーム型のミネラルガラス風防を採用。リューズのカボションには、プラチナケースの符丁となるレッドルビーがセットされる。

懐中時計から腕時計の時代となって、最初に直面したのが防水性能であった。その防水腕時計の先駆けとなったのがロレックスのオイスターだ。1926年に誕生し、今年で100周年を迎えた。そのアニバーサリーを祝して登場したのが、新作のオイスター パーペチュアルだ。「ROLEX」の文字をグラフィカルにデザインしたジュビリーモチーフダイヤルは、これまでも採用されてきたが、単色やエングレービングだった。しかしこのモデルでは10色を絶妙に配したカラフルな文字盤に仕上げた。これは一度に着色するのではなく、1色ずつラッカーを重ねた繊細な工程を経ており、華やかなだけでなく、工芸的な魅力も備える。ケースのサイズは36mmなので、男女を問わず、腕元で映える1本となってくれる。

ウブロは2016年に、破片のような形が異なるダイヤモンドを文字盤、ベゼルやケースにセッティングした「ビッグ・バン インパクト バン」を発表したが、そのシャード(破片)モチーフを発展させ、「スピリット オブ ビッグ・バン」に採用した新作が登場。文字盤にガラスを割ったようなアプライドパーツを配置し、衝撃で割れて飛び散ったガラス片のように、絶妙に隙間を空けて内部構造を見せているのもウブロらしい。そのシャードには地球上でもっとも希少な金属とされる「結晶化オスミウム」が使用される。プラチナを超える密度と硬度を持つ金属で、青みを帯びた結晶体が乱反射するのが特徴。金属素材を貴石のように“見せる”仕上げも斬新だ。クリアなサファイアクリスタルケースとの相性もいい。

アイコニックなレバーロック式リューズプロテクターを備えるルミノールケースに、鍛造チタン(フォージドチタン)を採用した限定モデル。チタンは、軽量で金属アレルギーを起こしにくい一方で、加工や仕上げが難しい素材として知られる。パネライは新しいチタン合金ではなく、グレード2とグレード5のチタンから生み出した鍛造チタンを開発。その積層した模様はダマスカス鋼のように表出する。2種類のチタンは硬度も異なるので、切削や仕上げが困難だったに違いない。それをイタリア海軍向けの初代ルミノールのケースサイズである47mmで仕上げた。文字盤はケースの風合いに合わせて、サンブラッシュ仕上げのアンスラサイトダイヤルを採用し、針やサンドイッチ構造になった文字盤から見えるインデックスにはベージュのスーパールミノバが塗布される。

創業100周年を迎えたチューダーで目を引いたのは、新型の「モナーク」だ。モナークとは「君主」を意味し、ローマ数字とアラビア数字を上下に配した、いわゆるカリフォルニア文字盤が特徴。これはかつてロレックスが「エラープルーフ(誤読防止)」のために考案した意匠で、視認性を高める機能性から生まれたデザイン。2000年代初期のチューダーでも親しまれたこの文字盤を再び引き出してきたのは、アニバーサリーイヤーにふさわしい心憎い演出だ。ダークシャンパンカラーの文字盤に縦方向の筋目仕上げもヴィンテージの趣をいっそう深める。搭載されるCal.MT5662-2Uは、COSCとMETASによるマスタークロノメーターが認定する実力派。ヴィンテージ調の文字盤を備えながら、最新のムーブメントを搭載する時代の架け橋となる1本だ。

復刻モデルが毎年話題になるが、アーカイブを見ればコルムほどさまざまな挑戦をしてきた時計ブランドはないと分かる。コインを半分にスライスしてムーブメントを組み込んだコインウォッチ、孔雀の羽根を文字盤に採用したフェザーウォッチ、また文字盤に隕石をいち早く用いたのもコルムだった。そんな遺産のひとつである「ヘリテージ ゴールデンブック」が復刻を果たした。1996年に誕生した独特なブック型ケースは、ゴールド製の表紙が開閉できるようになっている。それを開くとシンプルなブルーの時分針が備わり、その背景には作家アーネスト・ヘミングウェイの箴言を刻んだ。搭載されるのはクラシカルな手巻きムーブメント。時刻を確認するためのものというより、ファッションのアクセントや人生について深く考えたいときに着けたい時計だ。

STAFF
Writer: Katsumi Takahashi
Editor: Kyoko Seko
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