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イタリア・ミラノで三代続くジュエラーとして知られる“SCAVIA(スカヴィア)”。多くのセレブリティに支持されている、創造性あふれるジュエリーを長年にわたり手がけてきたのが、現当主でありデザイナーのフルヴィオ・マリア・スカヴィア氏です。来日したフルヴィオ氏に、“スカヴィア”が継承してきた価値観、そして彼が長年の経験を経て得た哲学などについて、お話を伺った。
1911年創業のイタリア・ミラノの老舗ジュエラー“SCAVIA(スカヴィア)”。金細工が盛んなヴァレンツァ出身の宝飾職人ドメニコ・スカヴィア氏がミラノにてアトリエを開き、1923年には妻のマリア氏がショップをオープンしました。1950年代には娘のサラ・スカヴィア氏が事業を継承。1970年代にはミラノのトップジュエラーの地位を確立し、店舗をスピガ通りに移転します。その後3代目として“スカヴィア”の隆盛を担ったのが、サラ氏の息子であるフルヴィオ・マリア・スカヴィア氏でした。フルヴィオ氏は弱冠19歳でDe Beers主催の「Diamonds Today」コンテストにて1~3位を独占受賞してデビューし、以降「Diamonds International Awards」の常連となるなど、ジュエリーデザイナーとして活躍。そして“スカヴィア”は現在もミラノに工房を構え、フルヴィオ氏の先進的なデザインと、職人たちの卓越した技術を組み合わせたジュエリーを生み出しています。先日帝国ホテルにて開催された展示会にあわせて来日したフルヴィオ氏に、“スカヴィア”のものづくりについてお話を伺いました。

──まず、“スカヴィア”の特徴について、お聞かせください。
フルヴィオ:“スカヴィア”のジュエリーづくりの姿勢は、シンプルなものです。私たちのジュエリーはもともと「一点もの」です。現在でも私たちの工房では平均すると週に5、6個ほどの作品を製作しています。最近はいずれも新たに作ったものですが、10年前の作品などを見返して、デザインを取り上げる場合もあります。
“スカヴィア”の特徴としては、4つの点が挙げられます。1つ目は、innovative design、革新的なデザインです。見た時に驚きを覚えるような、それ以前にはないデザインということです。例えばこの写真のリングは50年前にデザインしたものです。ブラウンダイヤモンドを、珪化木と組み合わせています。石を乗せた形状を見てください、非常に革新的なデザインです。
2点目はtechnical perfection、技術的な完璧さです。世の中には素晴らしいデザインだっとしても、技術が伴っていないものも数多くあります。技術的な完璧さは、革新的なデザインを実現するために重要です。
3つ目はgiving happiness、それを着用した際に幸福をもたらすこと。そして4つ目はちょっとネガティブな表現になりますが、no showing off、「見せびらかさない」ことです。私がデザインするのはお客さまのためにであり、その人について語るものでなければなりません。
私は人生で出会った多くの女性たちから常にインスピレーションを受けています。そしてジュエリーをデザインする際は、特定の女性像を思い浮かべます。ですから、私の作品はすべて異なります。ジュエリーはその女性自身を語るために見られるべきものであり、生活の中で着けられるものでないといけない。(財力などを)誇示するためのものではないのです。
今、私が重点的に取り組んでいることは、重すぎない、軽い作品を作ることです。なぜなら現代の生活では、たとえ裕福な女性であっても、ジュエリーをより気軽に身につけたいと考えているからです。プレシャスで、貴重なものを非日常なシーンでつけるのではなくて、普段の生活で使えるものが求められています。

──“スカヴィア”は、フルヴィオさんで3世代目と伺っています。ファミリービジネスとして、継承している哲学、または先代の思い出などはありますか?
フルヴィオ:祖父のドメニコは、私が6歳ぐらいの時に亡くなりました。ですので残念ながらあまり覚えていません。彼はパラリンピックの選手だったんです。そして職人肌で、常に部屋にこもり、ジュエリーを作ることがとても好きだったと聞いています。その後店と工房の運営を引き継いだ母のサラは、偉大な女性でした。彼女はデザイナーであり、優れたセンスを備えていました。非常に聡明で、鋭い人でした。顧客の気持ちを感じとる能力があったと思います。不平不満を言わず、いつもハッピーな感じでした。
──フルヴィオさんは、ドメニコさんとサラさん、両者の気質を引き継いでいるのでしょうか。
フルヴィオ:母は私がジュエリーづくりを選んだことをとても喜んでいました。そして私は、日々与えられた才能以上のものを、人に与えるために働くということを(母から)学びました。祖父ドメニコはクラフツマンで、工房の主としてジュエリーをつくっていた人です。そして母からは、誠実にビジネスを守るあり方を学びました。現在私は77ですが、18歳からジュエリービジネスの世界で生きています。


──フルヴィオさんが取り組まれているジュエリーづくりに関して、もう少しお聞かせください。
フルヴィオ:私がお客さまにジュエリーを作る際、豪華な感じにする場合もあれば、小さなダイヤモンドを並べたピュアなラインを作ることもできます。お客さまの個性やご希望がどのようなものかを理解し、それに合ったデザイン、色や素材などを選びます。
あと、昨今はいわゆるリメイクが増えています。ハイクラスのお客さまはすでにたくさんのジュエリーをお持ちで、そのうちいくつかはデザインが現代にはちょっと合わなかったり、使い勝手が良くなかったりするものだったりします。ただ石の品質は素晴らしい。また贈り物として受け取ったものなどもあるでしょう。そうした往年のジュエリーをつくり直すのです。
──お客さまのご希望を踏まえて、ジュエリーを製作することが多いのでしょうか。
フルヴィオ:私たち“スカヴィア”と他のジュエリーブランドの違いは、他のブランドの多くにはリファレンスがあり、世界のどのお店でも同じものが提供されますが、私たちはお客さまそれぞれのためにジュエリーを創造し、そのひとつひとつにストーリーがあり、唯一無二です。では私たちのお客さまはどのような方たちかというと、知性があり、洗練され、文化を尊ぶ人々です。もちろんジュエリーはある程度高額ですが、私たちは100万円でも美しい作品を作ります。石を使わずにゴールドだけ、ということもあります。私は低品質な石や、トリートメントされた石は使いません。私たちのやり方は、かつてメゾンがインドの王族のためにジュエリーを作っていた時代のようかもしれません。
最近作ったリングをお見せしましょう。名前は「マリア・エリザベッタ」です。私は当初これを娘のためにデザインしたので、彼女の名前を冠しています。9カラットの大きなダイヤモンドで、ブルーはトパーズです、最初は石の存在感と美しいリングのデザインに目がいきますが、実際につけてみると、手元に馴染んで、日中ずっと過ごせることがわかります。


フルヴィオ:2~3年前に、ミラノのバガッティ・ヴァルセッキ美術館から展覧会のオファーをいただいて、“スカヴィア”の50年の歴史を辿った回顧展を開催しました。50の展示物で、1年ごとに50年を振り返るというもので、顧客にご協力いただいて作品を集めました。古いものは洗浄したり修復したりしたのですが、どれもつい数週間前に作られたもののような印象でした。自分たちがどれだけ先進的だったか改めて実感できました。1978年の作品でも、新しく感じます。“スカヴィア”のジュエリーはタイムレスだと、私は思っています。
──そうした長年のフルヴィオさんのキャリアの中で、もっとも印象に残っているジュエリーと、それにまつわるエピソードがありましたら、お聞かせください。
フルヴィオ:それではあるブレスレットについてお話ししましょう。17歳の時、私はパリが大好きで、列車に乗って行きました。当時私はエコール・ド・ボザールに行きたくて、しばらく滞在したんです。サン・ジェルマンの素敵なアパルトマンで勉強し、本を読み、美術館へ行きました。するとある日、通りで何かを売っている髭面の男たちを見かけました。彼らはアクセサリーを売っていたのですが、どれもひどい代物でした。そこで私は取り分50%でアクセサリーを作って売ることを彼らに提案しました。私は材料を買い、ブレスレットを作りました。そして男たちのところへ持って行き、「これをいくらで売る?」と聞きました。当初の提示は今の20ユーロほどでしょうか。私は「OK、夕方に戻ってくる」と伝えました。そして戻った時には、売上は10倍になっていました。私の仕事は多くの人を惹きつけたのです。そうしてしばらく私はアクセサリーを作っていました。ジュエリー作りを始めた時、まずこのブレスレットを作りたかった。私は工房で職人たちに作り方を教え、それは今も続いていて、さらに進歩しています。
その後、私はデビアスのゴールデンデザインアワードを複数回受賞することができました。私はほかの人が作ったものをただ真似るようなことはしませんし、日本向けやロシア向けといったジュエリーの作り方もしません。まず自分自身のために作ります。そして私がそれを好きになる。そうすることで正しい答えが導かれます。

──フルヴィオさんの技術やノウハウの継承、そして“スカヴィア”のこれからついて、お聞かせください。
フルヴィオ:私は長らくミラノ工科大学で教鞭を執っていました。その時、常に強調していたことがあります。それはまず良い品質であるべきだ、ということです。教え子たちは現在、さまざまな著名ブランドで働いています。
そして私の息子のアレッサンドロ、彼は彫刻家であり、とても良い作品を作ります。彼が“スカヴィア”を引き継げるよう、いま教えているところです。私は食べ物を前にして多くを語らないようなシンプルな人間が好きですが、彼はとてもシンプルで、地に足のついた人間です。そして私はどんな偉大な人々に対しても、極めてシンプルに接します。飾り気なく人々にアプローチし、サービスを全うします。さらに息子に話しているのは、“スカヴィア”はコマーシャルなブランドではなく、芸術作品に近いということです。先述の通り、お客さまのパーソナリティをジュエリーで表現することをミッションとしています。難しいことですが、こうしたことを引き継いでもらいたいと思っています。
そういえば、“スカヴィア”では現在、AIも導入しています。これは鉛筆で作ったデザイン画で、こちらはAIが作ったヴィジュアルです。AIはまるで触れられるかのようなリアルな質感をもたらしてくれます。鉛筆のデザイン画ではわからなかったフレーバーや感覚が伝わります。顧客には手描きのデザイン画とAIが作った画像、両方をお見せするようにしています。
AUTHOR
『エスクァイア日本版』(エスクァイア マガジン ジャパン)編集部を経て、『メンズプレシャス』(小学館)などでメンズファッションやデザインプロダクト、カルチャー等の企画を担当。それらの傍ら、紳士靴の雑誌『LAST(ラスト)』を創刊し編集長を務める。現在は『Advanced Time』本紙とオンラインのほか、さまざまなメディアにて、ファッションやライフスタイル分野でエディターまたはライターとして活動している。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
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