カンヌ、モナコ、ドバイ、ロンドン、ニューヨーク…世界のアートシーンが注目する異色のデジタルアーティスト 赤松裕介とは

今、カンヌを始め、パリ、バチカン、モナコ、ニューヨークなどのアートシーンで注目を集め、世界中のセレブリティから賞賛を受ける日本人アーティストがいる。その名は「赤松裕介」。一体彼は何者なのか。

LIFESTYLE Dec 18,2025
カンヌ、モナコ、ドバイ、ロンドン、ニューヨーク…世界のアートシーンが注目する異色のデジタルアーティスト 赤松裕介とは

スマホ1台でイマジネーションをクリエイトする“デジタルフィンガーアーティスト”

まずは、赤松氏のアートをいくつかご紹介しよう。

赤松氏のアートの画像
赤松氏のアートの画像
赤松氏のアートの画像

シュールレアリスムにも通じる、これら一連の作品は、撮影からコラージュやエフェクト等の加工・編集作業、そして仕上げまで、なんとスマートフォン1台で創作しているという。

赤松氏は自らを「デジタルフィンガーアーティスト」と名乗っている。デジタルガジェットの進化がもたらした、まさに指1本で「想像(イマジネーション)」を「創造(クリエーション)」する新たなアートだ。

とはいえ、そういったデジタルツールを駆使したアーティストは枚挙にいとまがなく、赤松氏だけが「特別な存在」とは言えないだろう。

ではなぜ、彼が世界中で認められる傑出したアーティストになりえたのか?

それは彼のユニークな来歴に由来する。

無名の業界人が世界放浪へ旅立つ

1967年(昭和42年)、大阪に生まれた赤松氏は、家庭の事情で高校進学を断念。お笑い芸人を目指してオーディションを受けるなか、渡辺プロダクションのマネージャーから誘いを受け85年(昭和60年)に上京する。そのとき居候した先が、当時売り出し中だったABブラザーズ(中山秀征氏・松野大介氏)の家だった。

「お笑い芸人を目指し続けてもいたのですが、それよりも下働きから何から芸能界の裏方としてあらゆる仕事をしました。まさに“丁稚奉公”でしたね(笑)」(赤松氏・以下同じ

中山氏と登壇している画像
中山秀征氏とは40年来の旧友。今年(2025年)、オテル バリエール ル マジェスティック カンヌで行われた78回カンヌ国際映画祭コラボレーションイベントでは中山氏と登壇。共同作品を腎臓病患者支援団体へ寄贈した。

その後、時代はバブルに突入。エンタメ業界は拡大の一途であり、バラエティや音楽、お笑いなどの番組も爆発的に増えていった。

「ABブラザーズがニッポン放送の“オールナイトニッポン”(ANN)のパーソナリティーに抜擢され、僕も局に出入りするようになり、そこから人脈も広がっていきました」

ANNでは木根尚登氏(TM NETWORK)やゴーバンズ、電気グルーヴ、松村邦洋氏を担当、森高千里氏、東幹久氏、伊集院光氏、爆笑問題などの番組構成作家を務め、リリーフランキー氏、鈴木おさむ氏といった当時の若手芸能人、ミュージシャンやクリエイターと交流を重ね、順調にキャリアを重ねていった。

が、そこまではよくある「業界遍歴」であり、エンタメ業界に携わる無名の一人でしかなかった。

そこに転機が訪れる。

当時存在した衛星放送ラジオ局のプロデューサー業に専念していた時、

「ある大手芸能プロダクションの会長から『おまえのやったことのないことを、海外で何か一つ成し遂げてこい』と言われまして」

普通であれば、その言葉をまともに受け取って、知り合いもいない、言葉もできない海外放浪を始める…という行動を取る人はいないだろう。

ところが赤松氏はそれを面白がり「それまで挑戦したことのなかった『映画を撮ろう』と決意して、映画を学ぶために香港に旅立ちました」

スマホ1つを持って、世界へと旅立つ赤松氏の画像
スマホ1つを持って、赤松氏は世界へと旅立った。

台湾からパリ、そしてカンヌで飛躍の時へ

「でも無一文ですから、とにかく食わなければならない。それで韓国やベトナム、シンガポールなど滞在先を変える度に各国のテレビ制作会社に飛び込んで仕事をもらいました。日本で裏方の仕事は一通りやっていましたから、その経験が買われてだいたい採用。丁稚奉公が役立ちました(笑)」

しかし、目的としていた「映画制作」は遅々として進まなかった。

「いつか作れるだろう…とタカを括っていたんですが、日々の生活にも追われてなかなか…。で、シンガポール滞在時に一念発起してiPhoneで10分程度の短編映画を撮ったんですね。それがシンガポールの新聞の一面に掲載されまして。とはいえ、ストーリーもないし、いろんな撮影断片を編集でつなぎ合わせただけのものだったので、『それは映画ではない』と日本の関係者から言われて、それで次はどこに行こうか?と、台湾を訪ねたんです。もちろんこれまで通り、知り合いなんていません(笑)」

台湾で、そのiPhoneの映画が「これはエンターテインメントではなく“アート”じゃないか?」と評価され、フランス行きを勧められる。

翌週にはパリの地に立った赤松氏は「ヌーヴェル・ヴァーグ最後の旗手」として知られる映画監督エリック・ロメールの制作会社を訪ね、そこで「きみはインプットとアウトプットが違う。それはアーティストの特性だから映画ではなくアーティストを目指しなさい」とアドバイスを受ける。

「おまえには才能がない、と酷評されたら帰国するつもりだったんですが(笑) でもアーティストと言われてもどんな作品を作っていいのか全然わからず途方に暮れました」

そうして迷い続けるなか「日本帰国時に滞在先として紹介されたのが、モナコ海洋博物館の元館長夫人という、とんでもない経歴のおばあさんだったんです」

そのツテで、パリで有名なドキュメンタリー監督を紹介され、監督の妹がパリでギャラリーをしていたことから写真展を開催。展示作は完売し、そこに客として来ていたサン・ジェルマンのギャラリーオーナーからオファーが入り、次の個展が決定する。

サン・ジェルマンで個展を開いたという反響は大きく、ギャラリーのゲストからカンヌ映画祭の一環で開催するモナコ海洋会議で作品を展示しないかと誘いを受ける。

「僕がモナコ海洋博物館館長夫人と知り合いだというと、メチャクチャ驚かれまして(笑) それもあって話がトントン拍子に進みました」

そして2019年、第73回カンヌ国際映画祭モナコ海洋会議会場で個展を開催、レッドカーペットを歩くという破格の好運に恵まれる。

「わらしべ長者みたいなものですね。僕の作品を見た方から声がかかり、それに応えるうちに次の道が開ける。でも、まさか映画をあきらめた人間がたった1年でカンヌのレッドカーペットを歩くとは(笑)」

世界の“YUSUKE AKAMATSU”に

その後の経歴は、実にきらびやかだ。

2020年、第77回ベネチア国際映画祭ベター・ワールド・フォーラムに参加、作品をベネチア市に寄贈。

2021年、モナコ公国グレース・ケリー財団、2022年、アルジャジーラ財団とデヴィッド・リンチ財団に作品を寄贈。

ロシア国立現代歴史博物館、カイロ国立古代博物館(エジプト)、シャトー・ド・ロワール(フランス)、ヴェネツィア・ビエンナーレなど名だたる場所で個展やイベントを開催。

ヴェネツィア・ビエンナーレでのワンショットの画像
ヴェネツィア・ビエンナーレでのワンショット。左はイタリア・メディチ家の子息。

なかでもバチカン市国との縁が深く、今年(2025年)カリタ・ポリティカ財団、バチカン教皇庁文化評議会、駐バチカン特命全権大使より日本代表アーティストとして「日本人二人目の永久展示者」に選出、作品がバチカン市国の所有地に常設されている。

2026年もロンドンやニューヨーク、パリ、カンヌなどでさまざまなイベント、さらに「MoMA(ニューヨーク近代美術館)公式学術本」に作品掲載、作品集の刊行も予定されている。

バチカン美術館へ作品2点を寄贈している画像
バチカン美術館へ作品2点を寄贈。
フランチェスコ・コッコパルメリオ枢機卿立法文書省名誉長官に、カリタ・ポルティカ財団に寄贈した作品を説明している画像
フランチェスコ・コッコパルメリオ枢機卿立法文書省名誉長官に、カリタ・ポルティカ財団に寄贈した作品を説明。

「僕は『コミュニケーションとは“振動”と“共鳴”である』と考えています。誰かの振動があって、それに共鳴が加わり、新たな振動が生まれて共鳴し広がっていく。それをスマホの写真で表現するのが僕の『アート』です。でも今の時代は、振動はあっても一方的で共鳴がない、そんな時代だと思うんですね。だからこそ、もっと人々とコミュニケーションを生む作品を創り続けていきたい」

Art is “Dialogue”…「芸術は『対話』である」をテーマに、YUSUKE AKAMATSUはアナログとデジタルの境界に立ち、スマホ1台で、人間の「振動」と「共鳴」を描きつづける。

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