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イタリア・ミラノ発のブランド“Valextra(ヴァレクストラ)”。1937年の創業以来、イタリアのクラフツマンシップを感じさせる精緻なつくりと、モダンなデザインが融合したバッグやレザーグッズなどを手がけ、ラグジュアリーブランドとして知られてきた。先日、福岡店のオープンに際し来日した“ヴァレクストラ”のグザヴィエ・ルゥジョーCEOに、ブランドの現在とその魅力、そして今後の方向性などについてお話を伺った。

──“ヴァレクストラ”について、ルゥジョーCEOご自身のお言葉でご説明いただくとしたら、どのようなブランドといえるでしょうか。
ルゥジョーCEO まず、私は“ヴァレクストラ”に関して、ファッションというよりは、精巧でエクセレントな品々のブランドと認識しています。創業者ジョヴァンニ・フォンタナはミラノでエンジニアとして活動していました。デザイナーやクリエイティブディレクターではなく、エンジニアとしてこの“ヴァレクストラ”を始めているんです。そしてミラノの建築物に見られるような純粋さ、構造美、機能性というものをバッグデザインに活かしています。
──なるほど。ミラノで培われたデザインに関する美意識が、フォンタナさんに影響を与えたということでしょうか。
ルゥジョーCEO フォンタナが注力していたのは、人々を観察することによって、どういう瞬間に、どういうものを必要とするのか、を捉えることです。そして必要なものを盛り込んだアイテムをつくることでした。この「観察をすること」は、ブランドのフィロソフィーでもあります。観察して、そこからトラベルのシーンでは何が必要か、ショッピングのシーンには何が必要かを考えながらつくっているのです。そして観察を経て、タイムレスなものをつくっていきます。

──そうしたフォンタナさんの姿勢は、現代にも受け継がれていると。
ルゥジョーCEO 例えばこの「トリックトラック」は、もともと60年代につくられた製品です。金具がなく、折り紙のように開閉するもので、約60年経った現在でも通用するデザインです。もともとメンズ向けでしたが、私がCEOに就任した際に、ジョヴァンニ・フォンタナのエスプリを活かしながら、現在のライフシーンにあわせてどうやって再解釈できるかということを考えたのです。そこで、ストラップを長くして、クロスボディバッグのようにできたらと発想しました。ストラップは取り外しできる形になっています。あと、バッグの身体側は、スマートフォンを安心して収納できるように、厚みをもたせています。この部分は折り曲げてメモが書けるようにもなっています。そう、付属のメモパッドにもこだわりがあって、クオリティを追求したかったので。ミラノの文具店のものを使っています。
──「トリックトラック」はシンプルなデザインながらも、構造的にユニークなこともあって、人気があります。
ルゥジョーCEO 日本のみなさんの、洗練とシンプルさを求める心に響いて、ご愛顧いただいているのだと思います。そして私たちのデザインには、唯一無二のものも多くあります。例えば多くのバッグやレザーグッズに見られる黒いエッジの処理。コスタと呼ばれているコバ塗りの技法ですが、これは今や“ヴァレクストラ”唯一といえます。そして、これはデザインであると同時に機能性もあります。ミラノのバッグづくりでは2枚の革を、断面をそのままに縫い合わせるやり方があるのですが、縫い合わせたところがわからないように、このコスタというエッジ処理の技法が生み出されました。そしてコスタのラッカー仕上げはジョヴァンニ・フォンタナのこだわりなのです。マットな色あいにすると、作業や粗さが隠せてしまう。シャイニーなものは、ちょっとでもホコリがはいったり、塗料の気泡が入ったりしても目立ってしまう。職人たちに完璧な仕事を求めたフォンタナは、ラッカー仕上げを選びました。機能が美につながるということを追求した結果でもあります。


──最新のアイテムについて、お聞かせください。
ルゥジョーCEO 日本だと「イジィデ」というモデルが、特別なオケージョンでも使えるバッグとして浸透していますが、私たちはこの「イジィデ」の幅をもう少し拡げて、もっとエフォートレスに、もっとデイリーに使えるようなものにならないかと考えました。そこで登場するのが変化形のエディターバッグ「イジィデ エディター」です。さらに形だけではなく素材も新しくしようということで、サブライムレザーという新しい革を採用しました。このサブライムレザーはこの秋冬から展開していて、プロトタイプを私が1年半ほど使ってみているのですが、上質な質感で丈夫な革です。またこのサブライムレザーと併せて導入したのが、センソヌバックという、“ヴァレクストラ”を象徴するミレプンテ グレインが施されたヌバックレザーです。これはより感覚に訴える素材といえます。バッグというのは見て美しさを楽しむだけでなく、持った時、触った時の感触や気持ち良さも大切だと、私は思っています。それによって持つ喜びを感じていただけると。自分の大切なものが柔らかな革に包まれているということは、さらに持つ喜びを増すのではないでしょうか。あと、この小さいほうは「イジィデ ティン」というモデルで、ティンとは、ミラノの言葉でかわいいという意味です。こちらはジェンダーレスに使っていただけるモデルで、クロスボディバッグにもできますし、短いストラップも付属しているので、ショルダーバッグにも、ポーチとして手持ちもできます。男性が持っても違和感のない洗練されたデザインです。この「イジィデ ティン」は、“ヴァレクストラ”の世界をまだご存知ない方にも、エントリーモデルとして訴求したいモデルです。普段気軽にお使いいただける感じです。

──“ヴァレクストラ”といえばグレイン加工のカーフスキンがよく知られていますが、素材のバリエーションが増えているのですね。
ルゥジョーCEO あと、この「アソルート」はメンズのラインとして、ビジネスなどでも使っていただけるものをと、リサイクルポリエステルを使ったアイテムになります。世界中で使われていた漁網をリサイクルした素材を使っています。ジップのヘッドはマットな仕上げ、止水ジップを使用していて、機能性もある一方で、デザインは折り紙的なアプローチで、男性向けですが、女性にも使っていただける感じに仕上げています。SS26ではこの「アソルート」のトートバッグを発売しています。ちなみに「アソルート」も、実際にプロトタイプをつくって、使用される方を観察した結果、さまざまなディテールをモディファイしています。


──“ヴァレクストラ”の魅力はどんなところにあると、ルゥジョーCEOはお考えですか。
ルゥジョーCEO ひとことでいうと、控えめなエレガンスですね。ロゴなども外に出ていません。でも隠れたところ、例えばこういうシリアルナンバーなどに、“ヴァレクストラ”であることが表現されています。このシリアルナンバーによって、手がけた職人がわかるので、安心感があります。この番号はブランドが未来に対して送る愛、またはプライドであって、私たちの責任が表れているともいえます。最近クワイエット・ラグジュアリーという言葉がよく使われますが、私たちはウィスパリング(=ささやき)・ラグジュアリーという表現を使っています。洗練された日本のお客様なら、その品がもたらす隠れた喜び、自分だけが知っている価値をお楽しみいただけるのではないでしょうか。
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AUTHOR
『エスクァイア日本版』(エスクァイア マガジン ジャパン)編集部を経て、『メンズプレシャス』(小学館)などでメンズファッションやデザインプロダクト、カルチャー等の企画を担当。それらの傍ら、紳士靴の雑誌『LAST(ラスト)』を創刊し編集長を務める。現在は『Advanced Time』本紙とオンラインのほか、さまざまなメディアにて、ファッションやライフスタイル分野でエディターまたはライターとして活動している。
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Editor: Yukihiro Sugawara
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