AdvancedClub 好評に終わった京都・町家エリアでの「長く愛せる家具と季節を感じるデザート」イベントをレポート!
1つの蒸留所のモルトウイスキーだけで造られているシングルモルトに対し、複数の蒸留所のモルトウイスキーやグレーンウイスキーをブレンドして造られるブレンデッドウイスキー。1800年代前半のスコットランドではウイスキーは樽から量り売りしていたが、1860年に酒税法で異なる蒸留所のウイスキーをブレンドすることが認められ、ブレンデッドウイスキーの銘柄が続々と誕生した。ブレンドには数十カ所もの蒸留所のウイスキーが用いられるが、“キーモルト”といわれる、印象的なフレーバーをもたらす蒸留所が各銘柄に存在している。スコッチのブレンデッドウイスキーを飲みながら、“キーモルト”のフレーバーを探る旅に出てみよう──。
ジョン・デュワー氏がジョン・デュワー&サンズ社を創業したのは1846年。会社を引き継いだ息子のジョン・アレクサンダー・デュワー氏とトミー・デュワー氏は、『デュワーズ』を世界的なブランドへと育て上げた。1893年には、ジョン・デュワー&サンズ社はヴィクトリア女王より英国王室御用達を賜わる。同年には、トミー氏がウイスキーを広めるために来日。日本とは明治時代中期から縁のあるブランドなのだ。
『デュワーズ』といえば、初代マスターブレンダーであるA・J・キャメロン氏が1890年に考案した“ダブルエイジ製法”によってもたらされる、スムースな味わいが特徴。それぞれに樽で熟成したモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした後、そのブレンデッドウイスキーを再び樽で熟成することで、なめらかなテクスチャーに仕上がるのだ。
究極のなめらかさを追求し、“ダブルエイジ製法”を進化させたのが、『デュワーズ ダブルダブル』シリーズ。手間と時間を惜しまず、4段階の熟成を施している。まずは、既に樽で熟成してあるモルトウイスキーを複数樽ブレンドし、再び樽で熟成。既に樽で熟成してあるグレーンウイスキーだけでも複数樽ブレンドし、再び樽で熟成させる。なめらかになったモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドした後、そのブレンデッドウイスキーを再び樽で熟成。仕上げに、シェリー樽で数か月ねかせ、華やかなフレーバーをまとわせるのだ。
『デュワーズ ダブルダブル 27年』の仕上げに使われているのは、希少なパロ・コルタド・シェリーの樽。パロ・コルタド・シェリーとは、辛口のフィノ・シェリーを製造する過程で、発酵の具合により樽の影響を受け、オロロソ・シェリーに近い仕上がりとなったシェリー酒のことをいう。偶然によって生み出される奇跡のパロ・コルタド・シェリーの味わいは、オロロソ・シェリーほど重くはなく、フィノほど辛口でもない。弾力のある柑橘系の甘酸っぱさがあり、なめらかで奥深い味わいのブレンデッドウイスキーとの相性の良さを感じさせる。
『デュワーズ ダブルダブル 27年』を少しずつ加水していくと、心地良い酸味の奥に、ジュワっとした蜂蜜のような甘さがしっかりと感じられる。これは、『デュワーズ』のキーモルトである、『アバフェルディ』がもたらすフレーバーだ。アバフェルディ蒸溜所は、1898年に、創業者の息子のジョン・アレクサンダー氏によって設立された。昔ながらの木製の発酵槽を多く用い、通常よりも長い70時間の発酵を行っている。これにより蜂蜜のような香りを引き出し、『アバフェルディ』ならではの甘い香りを持つモルトウイスキーが生まれるのだ。
『アバフェルディ』とパロ・コルタド・シェリー、そして『デュワーズ ダブルダブル 27年』を飲み比べ、フレーバーをひも解くのも、一興だ。
13歳で食料雑貨店に丁稚奉公に出た、ジョージ・バランタイン氏。1827年には、19歳で念願の独立を果たす。酒税法が次々に改正され、ウイスキー業界の動きが活発になると、ジョージ氏は、60歳にしてウイスキーのブレンドに挑戦。その高いブレンド技術は、世界で知られるようになる。1895年には、バランタイン社はヴィクトリア女王より英国王室御用達を賜わった。
ジョージ氏が考案したレシピをベースに、1937年に誕生したのが『バランタイン 17年』。当時は、熟成年数の短いブレンデッドウイスキーが中心だったため、17年以上の熟成を経たウイスキーをブレンドすることは画期的だった。長期熟成のウイスキーが織りなす、気品ある香りと繊細で複雑な味わいに人々は魅了され、『バランタイン 17年』は“ザ・スコッチ”と呼ばれるようになる。
『バランタイン 17年』には40種類以上のモルトウイスキーとグレーンウイスキーがブレンドされており、キーモルトとして知られているのが、オークニー諸島のメインランド島にある『スキャパ』と、スペイサイド地方の『ミルトンダフ』『グレンバーギー』『グレントファース』だ。『スキャパ』は第一印象の華やかな花の香りや果実感、『ミルトンダフ』はブレンデッドウイスキーの骨格を造り、『グレンバーギー』はフルーティーでスイートな味わいをもたらし、『グレントファース』はベリー系やナッツのようなスムースな余韻に寄与している。
80年以上愛される至高のブレンデッドウイスキー『バランタイン 17年』にインスパイアされ、日本限定製品として特別にブレンドされたのが『バランタイン 17年 トリビュートリリース』だ。キーモルトは同じながら、ブレンドの比率を変えている。『ミルトンダフ』の比率を抑えつつ『グレンバーギー』の比率を上げることで、ジャムのような芳醇な甘さが強調された。
熟成樽にも様々な種類を取り入れることによって、よりクリーミーな味わいを実現。『バランタイン 17年』は、2、3回ウイスキーの熟成に使用したアメリカンオーク樽で使用することが多いが、『バランタイン 17年 トリビュートリリース』には、ウイスキーの熟成に1回しか使用していないヨーロピアンオーク樽とアメリカンオーク樽も用いた。
ボトリングに際し、澱を取り除くための冷却ろ過を行っていないので、ウイスキーの豊かなフレーバーを、そのままに味わえる。少しづつ加水すると、熟した桃のようなフルーティーさとホワイトチョコのようなリッチな甘さがバランス良く広がっていく。そして、ほんのりとしたピート香の余韻が、まるでハーブティーのようで心地良い。
『バランタイン 17年』と『バランタイン 17年 トリビュートリリース』を飲み比べ、フレーバーのバランスの違いから、キーモルトを見出すのも、面白いだろう。
スコッチウイスキーの販売量で、不動の1位に君臨する『ジョニーウォーカー』。その歴史は1820年にさかのぼる。創業者ジョン・ウォーカー氏が14歳で開いた、小さな食料雑貨店がルーツだ。紅茶やワイン、スピリッツを扱っており、1850年代には、異なる樽のウイスキーのブレンドを試みたといわれている。
息子のアレクサンダー・ウォーカー氏は、1867年に自社のブレンデッドウイスキーを『ウォーカーズ・オールド・ハイランドウイスキー』として商標登録。4角形のボトルを採用し、ラベルを斜め24度に貼るという印象的なビジュアルを完成させた。
1889年には、3代目としてアレクサンダー氏の息子、ジョージ氏とアレクサンダー2世の兄弟が引き継ぐ。アレクサンダー2世がブレンドを担当し、レシピごとに『レッド』『ブラック』『ホワイト』として発売。祖父、ジョン氏のレシピを基にした『ブラック』は、通称“ジョニ黒”として、世界180か国以上で愛されるようになる。1934年には、ジョン・ウォーカーズ&サンズ社は、英国王ジョージ5世から英国王室御用達を賜わった。
現在、定番品のラインナップは、『レッド』『ブラック』など7つあり、その最上位にあたるのが『ジョニーウォーカー ブルーラベル』だ。誕生したのは1992年。高価格帯のブレンデッドウイスキーは熟成年数の長さで訴求する時代だったが、フレーバーの奥深さを追求し、熟成年数の縛りをなくしたブレンドに挑戦した。その結果、熟成年数の短いウイスキーと長いウイスキーが共鳴することで、奥深いシンフォニーを奏でる、革新的なブレンデッドウイスキーが誕生したのである。
『ジョニーウォーカー』のキーモルトは、スコットランド各地にある4つの蒸留所で、4角形のボトルにちなみ“4コーナー”と呼ばれている。ハイランド地方の『クライヌリッシュ』は蜂蜜のようなオイリーな甘さを、スペイサイド地方の『カードゥ』は麦の香ばしさを、ローランド地方の『グレンキンチー』は心地良いフローラル感を、アイラ島の『カリラ』はピート香を与えている。
そんなキーモルトをより体感できる飲み方が、スコットランドで考案された“パーフェクトサーブ”だ。まず、ストレートの『ジョニーウォーカー ブルーラベル』をノージング。フレッシュな柑橘の甘い香りが広がっていく。次に、氷をたくさん入れて冷やした水を口に含み、10秒待ってから飲みこむ。口内の温度を下げることで、味覚がリセットされるという。その後、ストレートの『ジョニーウォーカー ブルーラベル』をひとくち。少し口内に留めてから飲むと、トロっとしたリッチなテクスチャーを味わえる。これは、長期熟成のウイスキーならではの感触だ。そして、芳醇なフルーツの甘み、力強い麦感、草原にいるような心地良い香り、幻想的なスモーキーさ…と展開していくフレーバーを辿っていくと、ハイランドからスペイサイド、ローランド、そしてアイラ島…とスコットランドを旅している気分になれるだろう。
ヴァルカナイズ・ロンドン青山
2024年11月にリニューアルオープンし、さらに多彩な英国体験を愉しめる空間に。1階フロアには、英国を代表する衣食住のブランドが軒を連るほか、英国文化を学べるイベントスペースも。2階フロアには、ロイヤルワラントを賜る老舗ブランドから、英国で注目されている新進気鋭のブランドまで、約40ブランドがラインナップ。不定期でオープンするバーもあり、英国のテーラーと同じように、ウイスキーを飲みながらショッピングを愉しめる場合も。
東京都港区南青山5-8-5
営業時間:11:00~19:00
定休日:不定休
03-5464-5255
Instagram:@vulcanize_london_official
ウェッジウッド
左/『スターリット タンブラー』。星明かりに照らされた夜空(スターリット スカイ)をイメージしたカットが星のような煌めきを生み出し、クリスタルの美しさを最大限に引き出している。手のひらに馴染むカーブで、女性も持ちやすい。希望小売価格5,500円
右/『アニュアル タンブラー 2025 エア』。毎年、発表されるコレクターズアイテムの『アニュアル タンブラー』。2025年はすべての生命を支えるエネルギーの源“エア(空気)”がモチーフ。空気をイメージした軽やかなカットに加え、底面をぐるりと囲むように施されたデザインも目を引く。希望小売価格6,600円
※『ヴァルカナイズ・ロンドン 青山』でも、お取り寄せ可能です。
フィスカースジャパン株式会社
0120-973-826
https://www.wedgwood.jp/
●掲載商品の価格はすべて、税込み価格です。
AUTHOR
慶應義塾大学を卒業後、ラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーWEB』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了され、蒸留所の立ち上げに参画。ウイスキープロフェッショナルを保有し、酒類コンペティションの審査員も務める。公社)日本観光振興協会 日本酒蔵ツーリズム推進協議会 会員。
STAFF
Photos: Yuichiro Ogura
Writer: Arisa Magoshi
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