ライカダンディ

僕と「ライカ」と男たち

小学館の男性誌MEN’S Preciousのクリエイティブディレクターや、カタログなどを手がけるフリーエディターが語る「ライカ」にこだわる理由。

LIFESTYLE Dec 4,2021
ライカダンディ
2015年12月に訪れたモロッコ・マラケシュにて、午睡を貪るタジン鍋屋のおじいさんの画像
2015年12月に訪れたモロッコ・マラケシュにて、午睡を貪るタジン鍋屋のおじいさん。若者たちの間で急速に欧米化が進むこの国で、こんな昔ながらの風景がいつまで見られるのかは、誰にもわからない。

19世紀につくられたミラノ貴族の庭園で、白髪のおしゃれなイタリア人夫婦がベンチに座って肩を寄せ合い、楽しそうに携帯の画面を眺めている。気がつくとそれまでの曇り空を夕方の光が切り裂き、仲睦まじげなふたりに天然のスポットライトを当てている。編集者として世界を旅していると、ごくたまに「とんでもなくスウィートな瞬間」に出くわすことがあるんだ。しかしそのとき私が持っていたのは、400万画素の安デジカメであった……。

この光景を永遠に記憶しておきたい。そして雑誌だろうとSNSだろうと、誰かに伝えておきたい。そんな思いから僕が手に入れたのが、「ライカ」のM型デジタルカメラだった。それはしがない編集者の僕にとっては目の玉が飛び出るほど高価なシロモノだし、もっと安価で便利で効率的な選択肢はあったのだけれど、なぜか触った瞬間にわかった。僕が手に入れるべきはこのカメラなんだと。

それから4年。モロッコ、キューバ、ポルトガル、イスラエルetc.様々な国を旅したけれど、「ライカ」でなくては撮れなかった空気感や、「ライカ」だから撮らせてくれた格好いい男たちに何度も出会ってきた。僕の直感は当たっていたんだ。写真はモロッコ・マラケシュの市場(スーク)。どこか夢のような光景に感動しつつシャッターを切っていたら、突然目を覚ましたおじいさん。もしや怒られるかもと身構えていたら、僕のカメラを見たおじいさんは、ニッコリ笑って親指を立ててくれた……。

だから僕はこれからも、「ライカ」で撮る。世界のどこかに一瞬だけ現れるスウィートな光景と、最高にかっこいい男たちを絶対に忘れないために。

初出:2019年03月21日発行『AdvancedTime』01号。掲載内容は原則的に初出時のものです。

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