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エフォートレスなスタイルが広がる一方で、装いに敏感な男性たちの間で、いままたドレス感のある靴、ドレスシューズが注目されている。クラシックなスタイルに限らず、モードな服とも着こなせるドレスシューズとは。ここでは3つのブランドから今季展開されている、それぞれ独自の個性を備えたドレスシューズを紹介する。
いま、大人な印象とスマート感、双方を備えたシューズとは、どのようなものだろうか。少し前ならばオーセンティックなデザインのレザースニーカー、またはエフォートレスな雰囲気のスリッポンなどが、有力な選択肢だった。それらはいまも人気アイテムであり、定番化しているが、それゆえにやや月並みに見えなくもない。その一方でドレスシューズ、「ドレス感」のある革靴が、足元にテンションと安定感をもたらして、新鮮に感じられているようだ。クラシックな装いでなくともそうした革靴を選び、「良質な違和感」を楽しむ人も増えている。装いの経験値が高い人ならば、より巧みな選択ができるかもしれない。そこで、いま注目したいドレス(感のある)シューズを、いくつかピックアップしてみた。

“ジョンロブ”の今季のコレクションは、ヴァーサタイルな靴を求める時代に応えるように、ラギッドなラバーソールを配した活動的なスタイルが多いが、同時に個性的なドレスシューズもラインナップされている。「ATRIUM(アトリウム)」は表面から縫い目や切り返しを減らした、ミニマルなホールカット(一枚革)のアッパーデザイン。履き口前方には6つの細いレザーバンドでカバーされたエラスティック(伸縮性あるゴム)部が配置されていて着脱がしやすく、
“ジョンロブ”の今季のコレクションは、ヴァーサタイルな靴を求める時代に応えるように、ラギッドなラバーソールを配した活動的なスタイルが多いが、同時に個性的なドレスシューズもラインナップされている。「ATRIUM(アトリウム)」は表面から縫い目や切り返しを減らした、ミニマルなホールカット(一枚革)のアッパーデザイン。履き口前方には6つの細いレザーバンドでカバーされたエラスティック(伸縮性あるゴム)部が配置されていて着脱がしやすく、エレガントなシルエットとエフォートレス感が共存している。タキシードシューズから着想されたということもあり、フォーマルな着こなしにはもちろん合わせやすいが、ジャケット&トラウザーズ、またはデニムなどと合わせても、その研ぎ澄まされたような存在感が、装いにクールで落ち着いた印象をもたらしてくれる。“ジョンロブ”を代表するスマートなラウンドトウの木型7000の形状美を堪能できるスタイルともいえそうだ。


今年6月のパリファッションウィークにて、『星の王子さま』をテーマにプレゼンテーションを行った“ベルルッティ”。そこで発表されたスペシャルコレクションのドレスシューズが、特別なディテールが盛り込まれた「アレッサンドロ」である。『星の王子さま』の著者アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリが描いたスケッチやデッサン、手紙に残された落書きなど、さまざまな創作の痕跡から着想されたコレクションでは、作品を象徴するモチーフが、パティーヌ(革の色づけ)や刺繍、独自の「スクリット」など同ブランドならではのテクニックを駆使して、靴やバッグ、革小物に表現されている。この「アレッサンドロ」には、『星の王子さま』にて人々が築く絆のもろさと強さ、そしてその絆を育み、大切にすることの尊さの象徴として描かれたバラのモチーフが片足に配されている。「ソット・ベッレ」と呼ばれる技法で描かれ、切り出されたという、バラの茎を象ったディテール、その先にはバラの花の残像のような赤色が、パティーヌによってあしらわれている。モチーフが持つメッセージ性は、独自の技術により抽象化されて、印象的なデザインとしてスタイリングのアクセントになる。装うことの創造性を改めて認識させるような、“ベルルッティ”らしいドレスシューズといえるだろう。ちなみにこの「アレッサンドロ」を含む『星の王子さま』スペシャルコレクションのインスタレーション「 レゾナンス─ 『星の王子さま』とベルルッティの対話」が、10月24日(土)から26日(月)まで、銀座 蔦屋書店 GINZA ATRIUMにて展示される。


最後に紹介するのは、先日“バレンシアガ”とのコラボレーションが大きな話題となった“ジェイエムウエストン”が手掛ける新たなプレステージシューズコレクション「Fusain(フュザン)」。デッサン画を描く時に使用する木炭を指す語を冠したコレクションは、抑揚ある木型形状が生み出す、くっきりとしたフォルムが特徴である。やや長めのノーズのスクエアトウは、往年のビスポークシューズを連想させる。現在オックスフォード(内羽根)、ダービー(外羽根)、ローファーなど7型が展開されているが、この10月からはプレシャスな素材を使った2つの受注生産モデルが加わった。ブラックボックスカーフとブラックアリゲーターレザーのコンビネーションによる「フュザン アシンメトリカル オックスフォード」と「フュザン パーフォレイテッド チェスト ピース オックスフォード」。大きな一枚革のパーツを使ったデザインに、レース(靴紐)部にアリゲーターを部分使いして、ミニマルな雰囲気の中にリュクスな要素が盛り込まれている。特に「フュザン アシンメトリカル オックスフォード」は、アウトサイドにのみ切り返しが配されたユニークなアシンメトリーデザイン。定番スタイルが多いドレスシューズにおいて、エレガンスを備えながらも、新たなスタイルを追求できる、可能性を体現しているともいえるだろう。ドレッシーなパイピングも独特な意匠だ。

今回取り上げた靴は、それぞれオーセンティックなスタイルや製靴技術などをベースとしながらも、現代のライフスタイルや美意識に応える、新鮮な存在感や美しさが表現されている。十年一日のごとく見える高級紳士靴の世界でも、担い手たちは時代を見据えながら、次なる正統に向けて、不断に、さまざまなアプローチで靴づくりを追求している。そんなことが感じられるような、オリジナリティと個性が魅力だ。
AUTHOR
『エスクァイア日本版』(エスクァイア マガジン ジャパン)編集部を経て、『メンズプレシャス』(小学館)などでメンズファッションやデザインプロダクト、カルチャー等の企画を担当。それらの傍ら、紳士靴の雑誌『LAST(ラスト)』を創刊し編集長を務める。現在は『Advanced Time』本紙とオンラインのほか、さまざまなメディアにて、ファッションやライフスタイル分野でエディターまたはライターとして活動している。
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
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