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職人とその技術が主役となる日本の着物の伝統技術を活かした牛首紬とMIZENの試み

日本の伝統的工芸品に、息をのむほどの美を発見することがある。石川県白山市にオープンした牛首紬 × MIZEN 白山店〈加賀乃織座〉にある牛首袖も見るものをひきつけて離さない魅力を放っている。

FASHION Mar 10,2025

職人とその技術が主役となる日本の着物の伝統技術を活かした牛首紬とMIZENの試み

元エルメスデザイナーを魅了した牛首袖の美学
石川県で800年の歴史を持つ伝統的工芸品牛首袖
MIZENプロジェクトから生まれた牛首紬 × MIZEN 白山店〈加賀乃織座〉

元エルメスデザイナーを魅了した牛首袖の美学

日本の着物の伝統技術を活かした次世代のラグジュアリーを提唱するMIZEN代表の寺西俊輔氏と牛首紬の出会いは10年前に遡る。当時エルメスのデザイナーであった寺西氏は、パリで開かれたプルミエールビジョンで生地の視察をしていた時、会場に展示されていた西山産業の牛首紬をひと見て、その静かな美しさに目を奪われた。西山産業の代表、西山博之氏から、その紬の糸が人の手によって紡がれている事実を告げられると衝撃を受けたという。

西山産業開発の西山博之代表（右）とMIZENの寺西俊輔代表の画像 — 西山産業開発の西山博之代表（右）とMIZENの寺西俊輔代表のプレゼンテーション。

石川県で800年の歴史を持つ伝統的工芸品牛首袖

牛首紬と玉繭の画像 — 左／牛首紬の一見シンプルな中に表現された繊細な色合いや色の組み合わせのバランスに寺西氏は魅了されたという。　右／繭全体の２～３％しか生まれない稀少な玉繭。

石川県伝統的工芸品の牛首紬は、800年の歴史を持つ、２頭の蚕が共同で１つの繭を作り上げる希少な繭「玉繭」を主として織られた織物だ。２本の糸が複雑に絡み合い独特の節が緯（ヨコ）方向に見られるのが大きな特徴で、別名釘抜き紬とも呼ばれるように、その生地は極めて丈夫なことでも知られる。

MIZENプロジェクトから生まれた牛首紬 × MIZEN 白山店〈加賀乃織座〉

牛首紬に魅了された寺西氏と西山氏の運命的な邂逅をきっかけに、2016年から「MIZEN プロジェクト」がスタートした。ユニークなのは、MIZENが目指すのはファッションブランドではないということだ。現在主流のファッションはデザイナーがピラミッドの頂点に立ち、技術はデザイナーが世界観を具現化するための道具となる世界。そんなデザイナー中心のルール下に押し込むのではなく、職人と技術が主役となり、作品を通じて暮らし手と作り手が心で繋がる価値観こそが、これからの時代に求められる新たなラグジュアリーととらえ、これらの理念に共感する仲間集めをすることがMIZENプロジェクトの本質だという。

そんなMIZENプロジェクトの考えを反映したMIZEN初のコラボレーション店舗が、2025年1月、西山産業が運営する石川県白山市の白山工房内にオープンした、牛首紬 × MIZEN 白山店〈加賀乃織座〉だ。

牛首紬の地元石川県白山にある織元ならではの圧倒的な反物数を誇り、牛首紬を使った加賀乃織座オリジナル商品の小物や雑貨などもラインナップする。