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イタリア・ミラノで開催されている、“ダミアーニ”の100周年を記念した展覧会『Damiani 100×100 Italiani』。周年にあわせて100点のジュエリーを展示するという壮大なスケールもさることながら、それぞれのジュエリーに関しても、極めてラグジュアリーで個性的な傑作が揃っている。
1924年に、北イタリアの金細工が盛んな地域、ヴァレンツァで創業したジュエリーブランド“DAMIANI(ダミアーニ)”。創業者エンリコ・ダミアーニ氏以来、ダミアーニ家によって営まれ、いまなお創業地を本拠とする同ブランドは、今年で100周年を迎える。その節目の年を記念した展覧会『Damiani 100×100 Italiani』が、ミラノのGALLERIE D’ITALIAにて開催中。ミラノ工科大学教授(ジュエリーデザイン)のアルバ・カペリエリがキュレーターを務め、レアストーンを使った稀少なジュエリーコレクションを、周年にあわせて100点、展示している。
金細工の名工であったエンリコ・ダミアーニ氏は、独立後まもなく貴族の間で注目され、高額なジュエリーの制作を依頼されるようになった。その跡を継いだ息子のダミアーノ氏は、技術革新やデザイン、広告などに注力し、“ダミアーニ”はジュエリーブランドとして発展した。ダミアーノ氏が事故で急逝した後は、彼の子どもたち、グィド、ジョルジョ、シルヴィアの3人がブランドを継承し、伝統的な技術との関係を保ちながら、革新的なスタイルを打ち出し、その名を広く世界に知らしめている。
今回、100点の傑作ジュエリーを紹介する展覧会は、“ダミアーニ”のイタリアらしさを表現する、5つの価値(テーマ)で構成されている。それぞれの内容は、三世代のジュエラーと彼らの夢・愛・成功の歴史を振り返る動画「家族」、「ミモザ・コレクション」の熟練の技、「マルゲリータ・コレクション」が表現する独創性、「ベル・エポック・コレクション」が描く歴史、そして「ファンタジーカット・コレクション」が象徴する情熱という。
“ダミアーニ”を象徴し、高度な職人技が発揮されている「ミモザ・コレクション」。「ミモザ エターナルブルー」は、サイズもカットも異なるいくつもの石をバランスよく組み合わせ、立体的なデザインを実現している。フレームを取り巻くように配置され、添えられた花のように柔らかな印象のダイヤモンドは、触感までも表現しているようで、“ダミアーニ”の高い技術が窺える。そして100カラットのクッションカットの見事なサファイヤ。ロイヤルブルーの魅惑的な輝きは、この石が重ねてきた悠久の時を感じさせる奥行きを備えている。この個性的な傑作は、豪華なネックレスとして着用したり、ダイヤモンドを散りばめたホワイトゴールドのチェーンにシンプルなペンダントとして下げたり、さらにラグジュアリーなブローチとしてなど、さまざまな方法で身につけることができる。
創業者エンリコ・ダミアーニ氏が、イタリア王国のマルゲリータ王妃へのオマージュとして1920年代に手がけた「マルゲリータ・コレクション」。花(マーガレット=マルゲリータ)をデザインモチーフに、花の中心に大きな石を配置し、それぞれの花びらにはダイヤモンドが職人の巧みな技を駆使し規則正しく並べられている。そして“ダミアーニ”100周年を記念して制作された「マルゲリータ デザート・ガーデン」では、20カラットを超える圧倒的な大きさの、ドロップカットのファンシーダイヤモンドがあしらわれている。このダイヤモンドの珍しいディープブラウンイエローの色合いにあわせるように、イエローゴールドにブラウンダイヤモンドとエメラルドが巧みに配置されている。それらはまた、ホワイトダイヤモンドとイエローファンシーダイヤモンドで構成された花のモチーフを際立たせてもいる。豪華でありながら、どこかナチュラルな、そしてチャーミングな存在感が魅力だ。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、パリを中心に華開いた文化、ベル・エポック。生き生きとしたその時代に着想を得たエンリコ・ダミアーニ氏は、同時代に発明され、当時の最先端文化だった映画をモチーフとしたクリエーションを展開。それは「ベル エポックコレクション」として、現在の“ダミアーニ”を構成している。今回の100周年を記念してつくられたのは、フィルムのリールをモチーフとしたホワイトゴールドのブレスレット「ベル エポック・フレーム」。17個の正方形のフレームにはダイヤモンドのパヴェが配され、フレーム同士はバケットカットのダイヤモンドで繋がれている。そして各フレームの中心には、ブリリアント、クッション、オーバル、ハートなどさまざまなカットの、色合いが異なるファンシーダイヤモンドがはめ込まれている。調和を感じさせるデザインに、イエロー、オレンジ、ブラウンなど濃淡の異なる石が、華やかさをもたらしている。
原石の美しさに対する“ダミアーニ”の情熱と、石を加工しジュエリーとして具現化する匠の技を象徴するのが「ファンタジーカット・コレクション」。“ダミアーニ”100周年を記念してつくられた「ファンタジーカット ザ・ダミアーニ・グリーントレジャー・オブ・ムゾー」は、同コレクションを象徴するクリエーションといえる。エメラルドカットとブリリアントカットのダイヤモンドをふんだんにあしらったホワイトゴールドのネックレスに下がるペンダントは、64カラット近いコロンビア・ムゾー鉱山産の巨大なエメラルド。南米北部の熱帯雨林を連想させる深みある緑色が印象的だ。ムゾー鉱山のエメラルドにはさまざまな伝説が遺っていて、魅力的なストーリーのひとつは、神が創造した最初の人間であるフラとテナの夫婦が、約束を破った罪により離れ離れになり、その悲しみで流した涙が美しい緑色のエメラルドになったというもの。また、この「ザ・ダミアーニ・グリーントレジャー・オブ・ムゾー」は、ペンダント部分を取り外して、別々に着用することもできる。
石が持つ悠久の美と唯一性、それらを活かしてジュエリーとして形にする感性と技術。前出の“ダミアーニ”100周年を記念した各コレクションのジュエリーからは、そんな同ブランドの魅力が十二分に伝わってくる。そしてこのような傑作が100点揃った『Damiani 100×100 Italiani』がいかに特別な機会であるか、容易に理解できるだろう。
会期:2024年3月19日(火) ~ 4月28日(日)
会場:Gallerie d’Italia (ガレリア デイタリア) 美術館
Piazza della Scala, 6, 20121 Milano MI, Italy
STAFF
Writer: Yukihiro Sugawara
Editor: Atsuyuki Kamiyama
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