タブロイドマガジンAdvancedTimeをお手元に
京都といえば、京料理や日本酒のイメージを持たれるかもしれないが、じつは明治37年(1904)にはフランス料理店ができ、洋食の歴史は長いし、昭和54年(1979)には丹波にワイナリーが開業。ワインを嗜むという文化は、京都では長く染みついている。そんな中、昨年ひっそりとオープンしたワインバーが、あまりにも素晴らしすぎた。AdvancedTime読者だけにこっそりお教えする。
京都の中心部、四条烏丸エリア。地下鉄と阪急の駅があり、デパートや銀行、有名企業などが建ち並び、表通りから一本道を入ると落ち着いた古い町並みも残る。近年、健啖家を唸らせる店も増え、夜は観光客も目立ち、賑わう。
昨年7月、この地にオープンしたのがワインバー『BRUN』(ブラン)。三度の飯よりワインが好きな(笑)筆者の情報網にたまたまひっかかり、気になっていた店で、この界隈での夕食後に立ち寄ってみた。

扉を開けると、瞬時に心地よいショックを受ける。なんとも静謐な空間なのだ。シンプルながら存在感のある、しかし安心できる温かみのあるカウンター。古い町家を改装したと思われる天井は、屋根の形が分かるほどの高さがある。客席はわずかながら、広々とした空間が初めての訪問者にも安堵感を与えてくれる。照明のバランスも絶妙で、奥にガラス張りのセラーが見えた。
この日、まだ他には誰もおらず、私が最初の客。物静かな店主が迎えてくれた。腰を下ろすと一瞬にして、この上品かつラグジュアリーな空間に魅了された。これはワインも間違いないと確信する。

この店のInstagramには、「クリーンナチュラルからクラシックまで垣根の無いワインセレクト」と記されている。まずはグラスで白ワインを所望した。店主がカウンターに並べてくれたワインは、フランス・ブルゴーニュをはじめ、ドイツのものまで7種類。これは頼もしい。過去に飲んだ馴染の銘柄もあったが、この日は初めて出合ったオーストリアの珍しいソーヴィニヨンブランを選んでみた。これは……!いや、詳細を語るのはよそう。口にした途端、お尻に根が生えたとだけ申し添えておく。
その後、赤ワインをお願いすると、フランス・ローヌからイタリアものまで6種類を並べてくれた。そこから2018年のバローロをチョイス。想定以上に奥深く、格調の高い香りと味わいで、頬が緩んでしまう。聞けば、グラスワインは泡、白、赤など計15~20種類を用意しているという。
時間が経つと、他の客もやってきた。旅行中のカップルもいれば、外国人観光客のグループもいる。それぞれに細やかに、そして優しく対応する店主。人が増えても、店内の雰囲気は変わらない。東京なら西麻布あたりにありそうな、隠れ家的ワインバーといえようか。
すっかり愛着を持ってしまい、会計を済ませて帰るときには、再訪を心に誓っていた。



二度目にこの店を訪れたのは、初訪問から3か月以上が経っていたが、店主は私のことを覚えていてくれた。これはプロ中のプロだと思い、改めて今回、話を聞くことになった。
店主の名は、大山達也さん。京都市に生まれ、調理師専門学校を経て、神戸のイタリアンに勤める。そこで地元のワインバー店主と出会い、就業後に通うように。
「ワインにハマったきっかけは、そのワインバーで口にしたシャンボール・ミュジニーでした。このワインに感動してしまい、週に3~4回は通っていたと思います。20年近く前の話ですが、当時はアンリ・ジャイエなどもリストにありましたね。休日は大阪のアカデミー・デュ・ヴァンに通いました」
24歳でソムリエ試験に合格した大山さんは、大阪にあるイタリアン『ポンテベッキオ』へ。“DRC”も一通り揃えていて、それを注文する上客も多かったというこの名店で4年間、ソムリエとして研鑽を積む。
その後、正統派フレンチ『オーベックファン神戸』を経て、神戸のイノベーティブ・スペイン料理店『カセント』へ。ミシュランで話題になったこの名店に5年間、マネージャーとして勤め、2021年、京都にオープンしたイノベーティブレストラン『コケ』でもマネージャーとして勤務。グルマンやフーディーが集う名店を渡り歩いてきたわけで、そのキャリアが素晴らしいサービスに繋がっているに違いない。

しかし、なぜこうした名店から離れ、ワインバーを始めたのか。
「仕事は充実していましたが、それ以上のキャリアアップに繋がらないように思えて、頭打ちを感じていました。燃え尽きた部分もあったかもしれませんが(笑)ワインバーは自分がワインを好きになったきっかけでしたし、休日は食べ歩きも好きですがワインバーに行くのはもっと好きでした。そちら側に自分も立ちたいと思ったのです」
それで約2年間、物件を探し、縁あったこの地にワインバーを開くことになったのだという。それにしても、この店の居心地の良い空間デザインには感心してしまう。
「設計建設事務所のikkenさんに意匠をお願いしました。白が基調ですが、意識したのはデザインと提供するワインとの統一感です。お店に足を運ぶのは、人に会いに行くという要素もあると思います。お客様は人に付くものですから、お客様ひとり一人に向き合うことに腐心しています」


店名の『BRUN』は、フランス語で“茶色”という意味。経年変化を連想させる色だという。オープンから1年、すでにいい時を経ている。これからの1年、いや5年後、10年後も楽しみにしたい、稀有なワインバーだ。

京都市下京区堺町通四条下ル小石町115-3 日宝堺町センター2F
070-6507-6789
営業時間:19時~26時
定休日:不定休
https://www.instagram.com/brun_kyoto/
STAFF
Writer:Indy Fujita
『AdvancedTime』は、自由でしなやかに生きるハイエンドな大人達におくる、スペシャルイシュー満載のメディア。
高感度なファッション、カルチャーに溺愛、未知の幅広い教養を求め、今までの人生で積んだ経験、知見を余裕をもって楽しみながら、進化するソーシャルに寄り添いたい。
何かに縛られていた時間から解き放たれつつある世代のライフスタイルを豊かに彩る『AdvancedTime』が発信する情報をさらに充実し、より速やかに、活用できる「AdvancedClub」会員組織を設けました。
「AdvancedClub」会員に登録すると、プレゼント応募情報の一覧、プレミアムな会員限定イベント、ブランドのエクスクルーシブアイテムの紹介など、特別なコンテンツ情報をメールマガジンでお届け致します。更に『AdvancedTime』のタブロイドマガジンのご案内もあり、送付手数料のみをご負担いただくことでお手元で『AdvancedTime』をお楽しみいただけます。
登録は無料です。
一緒に『AdvancedTime』を楽しみましょう!

vol.031

vol.030

vol.029

Special Issue.AdvancedTime×AQ

vol.028

vol.027

Special Issue.AdvancedTime×AQ

vol.026

vol.025

vol.024

vol.023

vol.022

vol.021

vol.020

vol.019

vol.018

vol.017

vol.016

vol.015

vol.014

vol.013

Special Issue.AdvancedTime×HARRY WINSTON

vol.012

vol.011

vol.010

Special Issue.AdvancedTime×GRAFF

vol.009

vol.008

vol.007

vol.006

vol.005

vol.004

vol.003

vol.002

Special Issue.01

vol.001

vol.000
“ビームス F”による“ドレイクス”、日本と英国のハイブリッドなスタイル
“バレンシアガ”と“ジェイエムウエストン”、創造性とクラフツマンシップの邂逅
『知的ラグジュアリー』が宿る、私の本の作り方
ジョンがヨーコと別居していた18カ月。モテ男はどこで何をしていたのか?『ジョン・レノン 失われた週末』に描かれた知られざる顔。
秋こそ沖縄へ。名門ホテル「沖縄ハーバービューホテル」で暮らすようなステイを