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ジョンとヨーコ。片時も離れず、一心同体。世界中の人々からラブ&ピースの象徴と崇められるふたりでも、蜜月期を経て別居していた「失われた週末」(The Lost Weekend)と呼ばれる18カ月の期間がありました。その時期、ジョンはどこで、誰とどんな生活を送っていたのだろうか・・・。
『ゴジラ-1.0』が日本映画として初めて視覚効果賞を受賞し、日本でも大いに注目を集めた第96回アカデミー賞授賞式。この時、最優秀短編アニメ賞を受賞したのが『WAR IS OVER! Inspired by the Music of John & Yoko』。ジョンとヨーコの「Happy Xmas (War Is Over)」に着想を得た作品で、オノ・ヨーコと彼らの息子ショーン・レノンがエグゼクティブ・プロデューサーを務めている。
当日は母の日でもあったことから、壇上に上がったショーンは「みんな、“母の日おめでとう、ヨーコ!”って言ってくれるかな?」とスピーチ。ヨーコは今年、91歳になった。ショーンは子ども時代の面影はあるものの、かなり貫禄が出ており、同じくジョンの息子で異母兄であるジュリアンとの近影を見ると、ふたりとも福々しい。
もしかして、ジョンが生きていたら、彼もまたこんなふくよかな感じで年を重ねていたのかもと想像せずにはいられない。ショーンは48歳。ジュリアンは61歳。ジョンが凶弾に倒れたのは彼らよりもずっと若い、1980年、40歳のときだった。毎年、クリスマスになると街中で流れる「Happy Xmas (War Is Over)」。ジョンといえばヨーコ。片時も離れず、一心同体。一時期はビートルズを解散させたのはヨーコとすら言われていた。ただし、音楽ファンにはよく知られていることだが、ジョンとヨーコには別居していた「失われた週末」(The Lost Weekend)と呼ばれている18カ月の期間があった。とはいえ、その時期、ジョンはどこで、誰とどんな生活を送っていたのかはビートルズ・ファンでもなかなか知られていないのではないだろうか。
ジョンとヨーコの個人秘書で、プロダクション・アシスタントを務めていた中国系アメリカ人のメイ・パンは1973年9月から1975年2月までジョンの恋人だった。ドキュメンタリー映画『ジョン・レノン 失われた週末』では50年の時を経て、彼女の口から赤裸々なジョンとの関係が明かされる。これまではグルーピーの愛人など、スキャンダルやゴシップのように伝えられることの多かった彼女だが、私見とはいえ、実際には思いもよらない恋愛模様が繰り広げられていたことに驚かされる。登場人物はジョン、ヨーコだけでなく、ビートルズのメンバーはもちろん、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン、ミック・ジャガー……ととんでもない。
メイは中国人の両親の元、移民2世としてニューヨークのスパニッシュ・ハーレムで育った。学校を卒業して、19歳で家を出ると、ロック好きの彼女は運良く音楽業界に潜り込む。ジョンのマネージャーだったアラン・クラインの「アブコ・レコード」の社員となった彼女はジョンとヨーコが監督する前衛映画の製作助手を務めるうち、彼らに気に入られ、専属の個人秘書に指名される。
ほど無くして、ジョンとヨーコは積極的な政治的活動のせいで、FBIに目をつけられてしまう。尾行や盗聴される日々が続き、繊細なジョンの精神はダウン。ヨーコの目の前で浮気をすることもあった。見かねたヨーコはメイに公認の愛人にならないかと持ちかける。それだけ、彼女はメイの仕事ぶりを見て、信頼していたのだろう。メイはヨーコの指示で、ジュリアンからかかってきた電話をジョンに取り継がないこともあった。ヨーコにどんな意図があったのか。ジョンを動揺させたくないという思いがあったかもしれない。ただ、このドキュメンタリーはあくまでもメイの視点で描かれているので、ヨーコはやり手の策略家に見える。
一度は申し出を断ったメイだが、10歳上のジョンが彼女に夢中になり、あっけなく恋に落ちる。ジョンは自宅であるニューヨークのダコタハウスを離れ、メイとふたりでロサンゼルスに旅立った。
たった18カ月間ではあるが、この時期はジョンがソロとして最も精力的に活動し、成功していた時期だといえる。『マインド・ゲームス(旧邦題:ヌートピア宣言)』(73)、ソロ初の全米シングルチャート第1位を獲得した、エルトン・ジョンとの「真夜中を突っ走れ」を含む『心の壁、愛の橋』(74)、オールディーズのカヴァー『ロックン・ロール』(75)と3枚のアルバムを作成。多くのセレブたちと交友し、ミュージシャンたちとのセッションを楽しんだ。
ヨーコがナイーヴなジョンを守るためなのか、他者との関わりを完全にシャットダウンさせていたのに対し、メイは彼の才能を信奉し、サポート。彼が自由に思うまま、過ごせるよう解放した。ヨーコと対立していた元妻シンシアとも友だちになり、長年、会えずにいたジュリアンとの父子関係を修復している。
劇中、衝撃を受けたのは、ジョンがハリー・ニルソンのアルバムのプロデューサーを引き受け、リンゴ・スターをはじめ、多くのミュージシャンたちとレコーディング・スタジオにいた時のエピソード。妻のリンダを引き連れ、やってきたのはポール・マッカートニー。他のミュージシャンたち同様、ヨーコ抜きのジョンに会おうと、ポールも鬼の居ぬ間にと駆けつけたのかと思いきや、実はポールはヨーコからの「帰ってこい」というメッセージをジョンに伝えにきたという。なんとヨーコは犬猿の仲として知られていたポールですら、手駒にしていた。恐るべし! あいすいません、ヨーコ!
それでもジョンはメイを選ぶ。ニューヨークに帰ってもジョンはメイと小さな部屋を借り、幸せに穏やかに暮らしていた。ではなぜ、ふたりは別れたのか。
ダコタハウスにジョンが戻らなかったら、歴史は大きく変わったかもしれないのに。あっけない、そして思いがけない結末に衝撃が走る。
監督:イヴ・ブランドスタイン、リチャード・カウフマン、スチュアート・サミュエルズ
出演:メイ・パン、ジョン・レノン、ジュリアン・レノン、ポール・マッカートニー、デヴィッド・ボウイ、エルトン・ジョン
2022年/アメリカ/英語/94分/カラー/1.85:1/5.1ch
原題:The Lost Weekend:A Love Story
字幕:松浦美奈
字幕監修:藤本国彦
配給:ミモザフィルムズ
■公開表記:5/10(金)より角川シネマ有楽町、シネクイント、新宿シネマカリテ、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国順次公開
公式サイト:https://mimosafilms.com/lostweekend/
ジョン・レノン/John Winston Ono Lennon ミュージシャン、ソングライター。1940年10月9日、英マージーサイド州リヴァプール生まれ。ビートルズではリーダー的存在で、リズム・ギターを担当。62年、シンシア・パウエルと結婚。63年、ジュリアン誕生。66年、オノ・ヨーコと出会い、68年、シンシアと離婚、69年にヨーコと結婚。75年、ヨーコとの間に息子ショーンが生まれると子育てのために“主夫”となる。80年に音楽活動を再開、 ヨーコとのアルバム『ダブル・ファンタジー』を発表するが、銃で撃たれ、死去。
MOVIE WRITER
髙山亜紀
フリーライター。現在は、ELLE digital、花人日和、JBPPRESSにて映画レビュー、映画コラムを連載中。単館からシネコン系まで幅広いジャンルの映画、日本、アジアのドラマをカバー。別名「日本橋の母」。
STAFF
Movie Writer: Aki Takayama
Composition: Kyoko Seko
©2021 Lost Weekend, LLC All Rights Reserved
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