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アジア初上陸「ACNラムセス大王ファラオのたちの黄金」で、富と繁栄の象徴たる大王が目指した壮大なヴィジョンに没入体験

アメリカ、フランスなど5会場でのワールドツアーの一環であり、日本ではアジア初上陸となる「ACNラムセス大王ファラオのたちの黄金」が開催中です。67年に亘り王座に君臨、100歳近くまで生き、授かった子供は100人以上。精巧なジオラマやプロジェクション・マッピング、VR体験をまじえた展示は表情豊か。栄華を誇ったラムセス大王を取り巻く世界に没入したい。

LIFESTYLE Mar 26,2025

アジア初上陸「ACNラムセス大王ファラオのたちの黄金」で、富と繁栄の象徴たる大王が目指した壮大なヴィジョンに没入体験

ラムセス2世の巨像の頭部。サウンドトラックもこのプログラムのために特別に制作されたもの。

日本ではあまり馴染みがないラムセス大王ことラムセス2世。ツタンカーメンの約1000年後、クレオパトラから遡ること約1000年前、20代で王座に就き、67年に亘り、君臨。92歳でこの世を去るまで、太陽神アメン・ラーとならぶ神として崇められた「王の中の王」、エジプト史上「最も偉大な王」と称される。あの時代になんと100歳近くまで生き、授かった子どもは100人以上。富と繁栄の象徴として知られているのがラムセス大王である。

エジプト政府公認として過去最大級の規模で催されている「ACN ラムセス大王展ファラオたちの黄金」は、日本で初めて「ラムセス大王」に着目した展覧会。円形劇場「IHIステージアラウンド東京」をリノベーションしたCREVIA BASE Tokyoのイベント第1弾として、NEON JAPANが開催。アメリカ、フランスなど5会場でのワールドツアーの一環として、遂に日本でアジア初上陸を果たした。ミュージアム内ではラムセス2世の時代を中心に約180点ものエジプトの至宝が展示されている。

エントランスで出迎えるのは巨大なラムセス大王の頭部の像

ACNラムセス大王ファラオのたちの黄金の画像 — こめかみに向かって傾斜した目、下向きにカーブした涙管、かぎ鼻、微かな微笑など、ラムセス２世の特徴を捉えた巨大な頭部。

神秘の世界の入り口となるエントランスで出迎えるのは巨大なラムセス大王の頭部の像。エジプト国外で展示されるのはこれが初めてとなる。1888年、プタハ神殿で発見された花崗岩でできた像は古い時代の王家のものをラムセス大王が自らのイメージに合うよう、作り替えたもの。ラムセス大王の時代はこの像に限らず、財宝などアクセサリー類もかなりの数のものが手を加えられ、流用されており、本来はもっと古い時代のものではないかと言われている。

貴重な展示であるのはもちろん、エンターテインメント性が高いのがこの展覧会の大きな特徴。通常の博物展示とは一線を画す。テーマは「没入体験」。効果的な照明、ダイナミックな音響設備、精巧なジオラマやプロジェクション・マッピングなどを使い、観る者を一気に　ラムセス大王が統治した時代のエジプトへとタイムスリップさせる。

プロジェクション・マッピングで再現した「カデシュの戦い」からは壮大なスケール感と当時の人々の熱量の高さまで伝わって

史上最も古い戦争とされている「カデシュの戦い」。ラムセス２世が攻めてきたヒッタイトと結んだ条約は世界で最初の平和同盟条約として知られているが、この戦いをわかりやすい解説と鮮やかなプロジェクション・マッピングで再現。当時の人々が描いた壁画の克明な内容に目を見張る。

ラムセス２世が建てた壮大な遺跡、アブ・シンデル神殿のスケール（縮尺）モデルの精巧さにも驚かされる。大神殿の四体の像はラムセス2世で、小神殿は王妃ネフェルタリに捧げられたもの。春分の日と秋分の日に太陽光が当たるように設計されている神秘的で緻密な設計。別料金のVRではこのアブ・シンデル神殿とネフェルタリ王妃の墓を体験することができる。

ワールドツアーで約50年ぶりに世界に公開される木棺

会場内で最も重要な展示品と言えるのが、今回、エジプトから特別に貸与されたラムセス２世の棺。レバノン杉でできた棺はこれもまた、元々は王のために作られた物ではなかった。それでも金箔こそ失われているが、貴重な香木を贅沢に使い、コブラをあしらった頭巾を被った両腕を組んだ王の姿を施した棺は独特なオーラに包まれている。蓋にはカルトゥーシュ（古代エジプトで使われていたヒエログリフ）で「ラムセスアメンから愛されし者」「ラーのマアトは力強い。ラーに選ばれし者」とある。さらにヒエラティック（神官文字）の長い碑文により、ラムセス２世の遺体が三度に渡って、移送されたことが記されている。この棺が前回、世界に公開されたのは1976〜77年。今回はそれ以来のお目見えとなる（一昨年のワールドツアー最初となるパリ展が47年ぶり）。

富と名誉の証、煌めく宝飾の数々は、芸術的にも完成された美しさ

会場には猫や子ライオンのミイラ、さらにタイトルの「黄金」の名に相応しく、金、銀、琥珀金、ラピスラズリ、黒曜石、トルコ石、カーネリアン（紅玉髄）、カルセドニー（玉髄）など、貴重な材料で作られた王家の副葬品を紹介。水差し、盃、彫像、首飾り、腕輪、指輪など、いずれも数千年の時を重ねたとは思えないほど美しく完璧な保存状態で、眩いばかりの光を放っている。

そして入場者が最後に見るのは石灰岩によるラムセス２世の巨像。両手にメケス（パピルスを入れる文書用の筒）を握りしめたこの像もまたエジプト国外で展示されるのはこの展覧会が初めてである。