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“ジェイエムウエストン”と“サカイ”が生み出す、新しい存在感。

日本を代表するデザイナーズブランドと、フランスの老舗シューズブランドとのコラボレーションから導かれた靴。高い品質の靴づくりに裏打ちされた、コンテンポラリーな存在感は、感性を刺激する新しいラグジュアリーを体現している。

FASHION Mar 7,2024

“sacai（サカイ）”は、阿部千登勢がデザイナーを務める、日本のファッションブランド。 “コムデギャルソン”のパタンナーを経た阿部は、1999年に“サカイ”をスタート。2007年には毎日ファッション大賞を受賞するなど、高い評価を得た。2010年代に入ってからはパリ・ファッションウィークにてショー形式でコレクションを発表するようになり、その存在は世界的に知られるようになった。

ユニークなソール形状が表現する個性

先日開催されたパリ・メンズファッションウィークにて、2024-25年秋冬ウィメンズ＆メンズコレクションを発表した“サカイ”。そこで話題となったのが、フランスの老舗シューズブランド“ジェイエムウエストン”とコラボレーションしたシューズだった。

“ジェイエムウエストン”は1891年創業という長い歴史を誇り、フランス・リモージュの自社ファクトリーでつくられる、グッドイヤーウェルト製法の高品質な革靴で知られている。中でもローファーの代表的存在である「シグニチャーローファー（#180）」や、ラバーソールにモカステッチのあるデザインの「ゴルフ（#641）」などが、クラシックなマスターピースとして世界中で人気を博している。

シグニチャーローファー（#180）の画像 — 1946年に誕生して以来、ほぼ変わらぬスタイルと製法で作られる「シグニチャーローファー（#180）」¥151,800（ジェイエムウエストン）

ゴルフ #641の画像 — “ジェイエムウエストン”を代表する靴のひとつ、ラバーソールの「ゴルフ #641」¥154,000（ジェイエムウエストン）

そんな伝統あるシューズブランドと、気鋭のモードブランドである“サカイ”がどのような経緯でコラボレーションすることになったのかは不明だが、他ブランドとの協業に関して、“サカイ”は長年さまざまな形で取り組んできた。靴に限っても、フランスの“パラブーツ”やアメリカの“ナイキ”、日本の“エンダースキーマ”など、複数の協業相手が挙がる。また一昨年には“カルティエ”とコラボレーションしジュエリーを発表したことも記憶に新しい。

ファッションショーの画像 — sacai2024-25AWcollectionファッションショーより。　©Getty Images

今回の“ジェイエムウエストン”と“サカイ”のコラボレーションは、先述した“ジェイエムウエストン”のクラシックなモデル「ゴルフ」と、近年登場した「ワーカー・ブーツ」がベースになっている。特徴はなんといってもかかと周りにかけて靴自体の大きさを超えて張り出しているミッドソール。さらにウェルト部分は“ジェイエムウエストン”の定番モデル「トリプルソールダービー」と同様の積層ウェルトが採用されていて、独特なソール形状と併せて、絶妙なバランス感に仕上がっている。

ここ最近は「厚底」の靴がトレンドだが、垂直ではなく水平にソールボリュームがあるのは新鮮。またソールやコバが張り出している構造は、その部分がバンパーの役割を果たして靴本体を保護する機能性もあるが、今回のこの意匠は、“サカイ”というブランドが不断に追求し続けている新たなシルエットの表現といえるだろう。そしてショーに登場した靴は、いずれも“ジェイエムウエストン”のファクトリーの職人たちによってつくられたものという。クラフツマンシップが実現する、アーティスティックで新しい存在感、そして美しさ。それはまた、現代的なラグジュアリーのあり方ともいえるのではないだろうか。

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